勘定科目

2024.05.27

LAN配線工事の勘定科目はどれ?個人事業主でも失敗しない経費処理

 

LAN配線工事とは?まず理解したい基本

LAN配線工事とは、オフィス・店舗・工場・学校などの建物内に、通信ネットワークを構築するための配線を整備する工事のことです
LANとは「Local Area Network(ローカルエリアネットワーク)」の略で、複数のパソコン・プリンター・サーバーなどを有線で接続し、高速かつ安定した通信を実現する仕組みを指します

このLAN配線工事は、インターネット回線の導入・社内ネットワーク構築・テレワーク環境の整備・監視カメラやIP電話の通信確保など、現代の業務インフラに欠かせない重要な工事です。
特に企業や店舗では、Wi-Fiだけでは通信が不安定になる場面も多く、有線LANの整備によって通信品質を安定化 させることが求められています。

LAN配線工事を実施することで、以下のようなメリットが得られます。

・ 通信速度と安定性の向上(業務効率アップ)

・ セキュリティリスクの低減(外部侵入の防止)

・ ネットワーク障害時のトラブル対応が容易

・ クラウドサービスやIP電話などの導入がスムーズ

つまり、LAN配線工事は単なる「配線作業」ではなく、会社の通信基盤を支えるインフラ整備工事 です。
そのため、施工には電気通信工事士などの国家資格を持つ専門業者の対応が必要になります。

LAN配線工事に含まれる作業内容

LAN配線工事の内容は、建物の構造や配線方法、利用目的によって異なります
一般的には、以下のような作業が行われます。

【LAN配線工事の主な作業内容一覧】

作業内容説明補足
LANケーブル敷設Cat5e・Cat6・Cat6Aなどのケーブルを壁内・天井裏に配線配線距離や経路により費用が変動
情報コンセント取付壁面やデスク近くにLAN差込口を設置OAフロア配線やモール施工も含む
ハブ(スイッチングハブ)設置ネットワーク機器の中継装置を設置機器設定・IPアドレス管理が必要
通信機器との結線ルーター・パソコン・複合機などを接続通信テストを実施して確認
配線整理・ラベリングケーブル識別のための番号ラベル付与保守・増設時に重要な工程

 

このように、LAN配線工事は機器の選定から施工・設定・動作確認まで一連の作業を含むのが特徴です。
特にオフィスでは、床下配線(OAフロア)や天井配線(吊り天)など、建物構造に合わせた施工方法を選ぶ必要があります。

また、最近では PoE給電(Power over Ethernet)対応のLAN施工も増えており、ネットワークカメラやWi-Fiアクセスポイントなどの電源供給もLANケーブルで行えるようになっています。
このような先進的なLAN工事は、通信と電力を一体化した「スマートオフィス化」に欠かせません。

費用の相場と内訳

LAN配線工事の費用は、施工規模・配線距離・建物の構造・配線経路・使用するケーブル種類 によって変動します
一般的な中小規模オフィスの場合、1本あたりのLANケーブル配線費用は約5,000〜10,000円前後が相場です。

【LAN配線工事の費用内訳(一般オフィス例)】

項目内容価格帯(税抜)
LANケーブル敷設1本あたり(Cat6基準)約5,000〜10,000円
情報コンセント設置1箇所あたり約5,000〜15,000円
ハブ・ルーター設置設定ネットワーク設定含む約10,000〜30,000円
OAフロア・モール施工隠蔽配線・整理施工約20,000〜50,000円
機器接続・テスト通信確認・調整作業約10,000〜20,000円

 

LAN工事費用の見積もりには、「材料費」・「施工費」・「機器費」・「諸経費」が含まれます。
特に配線距離が長くなるほど施工時間が増し、人件費と資材費の割合が高くなる傾向があります。

さらに、オフィスの構造によっては、天井配線や床下配線の追加工事 が必要になり、トータルコストが上がるケースもあります。
そのため、見積書を確認する際は、「どの範囲の作業が含まれているか」をしっかりチェックすることが大切です。

LAN配線工事は単価だけで比較せず、施工内容と保守体制を重視した業者選びがポイントとなります。

なぜ勘定科目が重要なのか?

LAN配線工事を実施する際には、会計処理における勘定科目の選定が非常に重要です
なぜなら、同じ「LAN配線工事」でも、目的・規模・期間によって会計上の扱いが大きく異なるからです

たとえば、

・ 新しいオフィス開設に伴うLAN工事 → 固定資産(建物附属設備)として計上

・ 既存オフィスの断線修理や小規模な改善 → 修繕費や通信費として経費処理

というように、目的が「新設」か「維持」かによって勘定科目が変わります。

勘定科目の設定を誤ると、以下のようなリスクが発生します。

・ 税務署からの指摘や修正申告の可能性

・ 減価償却資産の登録漏れによる損失

・ 経理データの不整合による決算トラブル

つまり、LAN配線工事は 「通信設備工事」であると同時に、資産形成にも関わる投資的支出になり得るということです
工事内容を理解したうえで、「どの勘定科目で処理するのが適切か」を明確に判断する必要があります

また、税務処理の正確性を高めるためには、見積書・請求書・領収書に工事項目を細かく明記してもらうことが重要です。
たとえば、「LAN配線工事一式」とだけ記載されている場合、経費か資産かの判断が曖昧になります。
そのため、依頼時に「用途を明記してもらう」ことが、経理上のリスク回避策になります。

【要点】

・ LAN配線工事は、通信インフラ構築のための専門工事

・ 作業内容は配線、接続、設定、動作確認まで多岐にわたる

・ 費用相場は1本あたり5,000〜10,000円前後が目安

・ 目的(新設 or 修理)によって勘定科目が異なる

・ 経理処理では修繕費 or 建物附属設備の判断がポイント

 

 


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LAN配線工事の勘定科目はこう選ぶ

LAN配線工事の会計処理では、「どの勘定科目に仕訳するか」が非常に重要なポイントになります
同じLAN配線工事でも、施工の目的や金額、耐用年数の有無によって処理方法が異なるためです
経理上の判断を誤ると、税務署から修正申告を求められるリスクや、経費計上漏れによる損失に繋がるおそれもあります

したがって、LAN配線工事を依頼する前に、「この工事は経費になるのか?資産になるのか?」を明確にしておく必要があります。
以下では、実務上の判断基準を踏まえて、勘定科目の選び方を具体的に解説します。

経費で落とせるパターン

LAN配線工事の費用が 「現状維持」や「軽微な修理」など、資産価値を高めない支出である場合、経費(修繕費)または通信費として処理できます
これは税法上、「原状回復のための支出」とみなされるためです。

【具体的なケース例】

・ 既存LANケーブルの断線修理

・ コンセント口やモジュラージャックの交換

・ LANケーブル数本の追加や取り回し変更

・ 通信機器の設定や再調整のみを行った場合

これらの工事は建物の価値を高めるものではなく、機能の維持・回復を目的とした作業であるため、経費計上が認められます。

【経費処理できるLAN配線工事の例】

工事内容勘定科目会計処理区分備考
LANケーブル修理(断線対応)修繕費経費処理機能維持目的
情報コンセント交換修繕費経費処理原状回復目的
LANケーブル2本増設通信費経費処理小規模工事
ルーター再設定・結線調整通信費経費処理消耗的支出

 

このように、軽微な改修や短期間で完結するLAN工事は経費で落とせることが多いです。
ただし、金額の目安としては20万円未満程度が一般的なラインとなります。
それを超える場合は、次項で説明する「固定資産」として処理することを検討しましょう。

固定資産になるパターン

LAN配線工事のうち、新規導入・大規模リニューアル・構造的な改修を伴う場合は、固定資産(建物附属設備または器具備品)として計上します
つまり、「企業の設備投資」にあたるケースです。

【具体的なケース例】

・ 新しいオフィスや工場の開設に伴うLAN敷設

・ 建物全体にLANケーブルを新設し、配管工事を行う場合

・ サーバールームやネットワークラックの新設

・ 既存システムを全面的に高速化や更新する改良工事

これらの工事は、建物の付帯設備として長期間使用される資産であり、税法上は「建物附属設備」として扱われます。

【固定資産扱いとなるLAN工事の例】

工事内容勘定科目会計処理区分耐用年数(目安)
新規LAN敷設(新オフィス開設)建物附属設備資産計上6年
全面改修(LAN更新・配管新設)建物附属設備資産計上6年
サーバールーム設備構築器具備品資産計上5年
大規模ネットワーク更新建物附属設備資産計上6年

 

このような固定資産は、減価償却によって数年に分けて費用化する必要があります。
LAN配線工事のような設備は、耐用年数6年(建物附属設備)が一般的な基準です。

また、施工の目的が「業務の効率化」や「通信環境の改善」であっても、構造的な変更や長期利用を前提としている場合は、資産計上する方が適切です。

勘定科目を間違えるとどうなる?

LAN配線工事の勘定科目を誤って処理すると、税務・会計の両面でトラブルに発展する可能性があります
以下に、典型的な誤りとその影響を整理します。

【勘定科目の誤りによる主なリスク】

誤った処理発生する問題想定される影響
固定資産を修繕費で処理減価償却漏れ税務署から修正申告を求められる
修繕費を資産計上経費過少計上利益が過大に計上され、税負担が増加
通信費で一括処理会計整合性の欠如決算書の信頼性が低下
勘定科目が混在管理帳簿の混乱財務分析や監査で不備が発生

 

特に注意すべきは、税務署がLAN配線工事を「建物附属設備」と見なすケース です。
例えば、20万円を超えるLAN敷設工事を修繕費として経費計上した場合、「資産計上すべきものを経費処理した」として否認される可能性があります。

その結果、追加課税・過少申告加算税・延滞税などのペナルティが課されるリスクもあるのです。

したがって、LAN配線工事を依頼した際には、見積書・請求書・契約書に工事の内容を詳細に記載 してもらい、「どのような目的の工事だったのか(修繕か新設か)」を明確に説明できるようにしておくことが大切です

勘定科目の選定が税務の鍵

LAN配線工事の勘定科目は、「費用の性質」によって変わります
短期的な修理なら経費(修繕費・通信費)、長期利用を目的とする設備投資なら固定資産(建物附属設備)です

・ 経費処理できるのは「維持、修理、小規模工事」

・ 資産計上すべきは「新設や大規模リニューアル」

・ 金額の目安は「20万円」が分岐点

・ 勘定科目の誤りは「税務リスク」を招く

・ 書類の保存と工事内容の説明がトラブル防止の鍵

LAN配線工事は通信インフラ整備だけでなく、企業経営の資産管理にも直結する重要な支出です
経理担当者や個人事業主は、「目的」「金額」「耐用年数」の3点を意識しながら、正確な勘定科目を選びましょう

次章では、実際の「仕訳例」をもとに、LAN配線工事をどのように帳簿へ記録すべきかをわかりやすく解説します。

 

 

電気工事における経理について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください!!

電気工事と経理:電気工事会社における経理業務の重要性とは?

 

仕訳の具体例で理解する

LAN配線工事の勘定科目を正しく理解したら、次に重要なのが「実際の仕訳処理」です
どんなに内容を把握していても、仕訳を誤ると 決算や税務申告で不整合が発生し、修正申告や課税リスクに繋がります

LAN配線工事は「新設・増設・修繕・移転」など目的によって扱いが異なるため、ここでは具体的なケース別に仕訳例を示しながら、どのように記帳すべきかを実務目線で解説します。

LAN新設・増設時の仕訳例

オフィス新設や拡張に伴ってLAN配線工事を行う場合は、資産計上が基本です
これは、LAN設備が建物に付属する形で長期的に利用されるため、「建物附属設備」として扱われるからです

【ケース例】

新オフィスの開設時にLAN配線工事を依頼し、総額300,000円(税抜)を支払った場合。

【LAN新設時の仕訳例】

借方金額貸方内容
建物附属設備300,000円普通預金LAN配線工事一式(新設)

 

このように仕訳することで、減価償却資産として6年間に分割して費用化できます。
なお、耐用年数は一般的に6年(建物附属設備)ですが、オフィス構造や工事内容によって異なる場合があります。

また、LAN工事を同時に行う電話回線・電源設備工事などとまとめて発注した場合は、LAN関連部分のみを分離して仕訳するのが望ましいです。
理由は、税務署の判断基準が通信設備と電気設備で異なるためです。

短期間の補修や修理の仕訳例

LANケーブルの断線修理や端子交換など、短期的な補修・復旧目的の工事は、資産計上ではなく修繕費として経費処理するのが正しい判断です

【ケース例】

LANケーブル断線の修理費用として 20,000円(税抜)を支払った場合。

【LAN修理の仕訳例】

借方金額貸方内容
修繕費20,000円現金LANケーブル断線修理費

 

このように「修繕費」として処理することで、発生年度の経費として即時計上できます。
また、ケーブル交換や端子増設など 建物の価値を高めない小規模工事は、すべて修繕費または通信費として処理して問題ありません。

【ポイント】

・ 一時的な修理・調整 → 修繕費

・ 小規模なケーブル交換 → 通信費

・ 消耗品レベルの対応 → 消耗品費

このように、金額・工事規模・継続使用期間を基準に判断することで、勘定科目を誤るリスクを防げます。

オフィス移転時の処理例

オフィス移転に伴うLAN配線工事では、撤去工事と新設工事が同時に発生することが多く、仕訳の扱いも複雑になります
この場合、旧オフィスでの撤去作業は修繕費、新オフィスでの新設は固定資産計上として分けて処理するのが原則です。

【ケース例】

旧オフィスでLAN撤去費用として50,000円、新オフィスでLAN新設費用として200,000円を支払った場合。

【オフィス移転時のLAN配線仕訳例】

借方金額貸方内容
修繕費50,000円普通預金旧オフィスLAN撤去工事
建物附属設備200,000円普通預金新オフィスLAN配線新設工事

 

このように、撤去費と新設費を分離して記帳することが非常に重要です。
まとめて処理してしまうと、税務上の分類誤りとみなされる可能性があります。

さらに、オフィス移転ではLAN工事だけでなく、照明・空調・電話・ネットワーク機器などの関連費用も発生します。
それぞれの工事項目を明確に分けておくことで、勘定科目ごとの正確な費用管理が実現します。

仕訳時の注意点とコツ

LAN配線工事の仕訳を行う際には、次の3点を押さえておくと正確です。

・ 見積書、請求書、領収書に「工事内容」を明記 しておく

・ 金額が20万円を超えるかどうかをまず判断

・ 新設 or 修理か を明確にして、資産計上と経費を分ける

また、クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)を利用している場合は、「勘定科目」選択欄で誤って通信費や雑費を選ばないよう注意しましょう。

LAN配線工事は見た目が小規模でも、実際には建物の通信インフラとしての機能を持つため、資産計上が必要なケースが意外に多いのです。

仕訳判断は「目的」と「金額」で決まる

LAN配線工事の仕訳は、目的(維持 or 新設)と 金額(20万円基準)によって明確に分かれます。

【LAN配線工事の仕訳判断早見表】

工事の目的金額勘定科目会計処理
LAN修理・端子交換少額(20万円未満)修繕費・通信費経費処理
LANケーブル小増設少額(20万円未満)通信費経費処理
新規LAN敷設高額(20万円以上)建物附属設備資産計上
オフィス移転時LAN工事分離処理撤去=修繕費、新設=建物附属設備混同防止

 

仕訳処理を正確に行うことで、税務署からの指摘を回避し、決算の信頼性を高めることができます
特に経理初心者や個人事業主の場合は、「勘定科目のルールを覚える」よりも、「工事の性質を理解する」ことが何より大切です

次章では、さらに踏み込んで 「確定申告でのLAN配線工事の扱い方」 を詳しく解説します。

 


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確定申告でのLAN配線工事の扱い方

LAN配線工事を行った際には、仕訳だけでなく確定申告での処理方法にも注意が必要です
特に個人事業主や中小企業では、「経費で落とせるのか」「固定資産になるのか」の判断が、税額や節税効果に直結します

LAN配線工事は見た目こそシンプルでも、税務上の扱いは「修繕費」「通信費」「建物附属設備」など複数に分かれるため、正しく分類できていないと税務署からの確認や修正指摘の対象になることがあります

この章では、青色申告・白色申告の違い、減価償却資産の扱い、税務署対応のコツをわかりやすく解説します。

青色申告・白色申告での記載方法

個人事業主がLAN配線工事を行った場合、確定申告書の記載方法は青色申告と白色申告で異なります
どちらの方式でも「工事の目的」によって経費か資産かの扱いが変わりますが、帳簿の付け方に違いがあります。

【青色申告と白色申告におけるLAN工事費の扱い】

申告区分記帳方法主な勘定科目特徴
青色申告複式簿記(仕訳帳・総勘定元帳)修繕費・通信費・建物附属設備勘定科目を明確化し、減価償却や特例処理が可能
白色申告簡易簿記(収支内訳書)通信費・修繕費など記録は簡易だが、20万円超は固定資産台帳に記載義務あり

 

青色申告では、勘定科目を細かく分けて仕訳することが求められます。
LAN配線工事が20万円を超える場合は「建物附属設備」または「器具備品」として資産登録し、減価償却を行います。
一方で白色申告では、簡易帳簿でも通信費や修繕費で記載可能ですが、同じく20万円超は固定資産台帳への登録が必要です。

【分類の目安】

区分内容勘定科目税務処理
軽微な修理・補修LANケーブルの断線修理や差込口交換など修繕費経費で処理可
小規模施工(10万円未満)部分的なLAN増設通信費または消耗品費一括経費化
中規模施工(10~20万円未満)フロア単位の配線増設など建物附属設備または器具備品一括償却資産(3年均等)として処理可
高額施工(20万円以上)オフィス全体のLAN新設など建物附属設備または器具備品固定資産登録+減価償却が必要

 

※ 青色申告者は「少額減価償却資産の特例」を利用すれば、30万円未満の資産をその年の経費として一括計上できます(年間上限300万円まで)。

減価償却資産になる場合の処理

LAN配線工事を固定資産(建物附属設備または器具備品)として計上した場合、確定申告時に「減価償却資産」として登録し、数年に分けて費用化する必要があります

【LAN配線工事の減価償却例(30万円・耐用年数6年の場合)】

年度償却率(定額法)償却費残存簿価
初年度0.16750,100円249,900円
2年目0.16750,100円199,800円
3年目以降同上

 

LAN配線を器具備品として扱う場合、耐用年数は6年が一般的です。
ただし、建物内に埋設される形で設置された場合は「建物附属設備」となり、建物の構造に応じて耐用年数が変わります。

建物構造建物附属設備の耐用年数
木造15年
鉄骨造20年
鉄筋コンクリート造22年

 

※ LAN配線が独立した設備として後から設置された場合は「器具備品(6年)」、建物の構造に組み込まれている場合は「建物附属設備(15〜22年)」として判断します。

【減価償却処理の実務ポイント】

・ 取得価額が10万円未満 → 消耗品費で経費処理可能

・ 10万~20万円未満 → 一括償却資産(3年均等償却)

・ 20万円以上 → 固定資産登録(減価償却)

・ 青色申告者なら30万円未満は特例で一括経費(年間300万円まで)

このように、LAN工事を固定資産として登録すると、一度に全額を経費計上できませんが、毎年一定額を償却費として計上可能です。
これにより、利益の平準化や税負担の安定化が期待できます。

税務署から質問されたときの対応方法

LAN配線工事の勘定科目や処理内容について、税務署から確認を受けるケースもあります
特に「修繕費と固定資産の区分があいまい」な場合、または「工事内容が不明瞭」な領収書がある場合に指摘されやすいです

そのようなときに備えて、以下の3点を徹底しておくとスムーズに説明できます。

1. 工事契約書・見積書・請求書を必ず保管する
   → 工事の範囲と目的が記載されている部分を明確に示せる。

2. 領収書に工事内容を追記・メモしておく
   → 「LAN配線修理費」「LAN新設工事」などを明記。

3. 工事後の写真や報告書を残す
   → 新設か修繕かを客観的に説明できる。

【税務署への対応時チェックリスト】

確認項目状況備考
工事の目的を説明できるか「新設」か「修理」かを明確に伝える
見積書・請求書を保存しているか税務署確認時に提示
勘定科目の根拠を示せるか科目選定理由を記録しておく
減価償却台帳に登録済みか固定資産登録は必須

賃貸物件でのLAN工事の注意点

賃貸オフィス・店舗などでLAN配線工事を行う場合は、「建物附属設備」ではなく「造作物(借主資産)」となるケースが多いです
この場合、借主が自己資産として減価償却します。
退去時に撤去義務がある場合は、償却期間を短縮(見積耐用年数)できることもあります。

例:賃貸オフィスのLAN配線 → 借主資産(耐用年数6年)
   退去時撤去が前提 → 工事費を全額経費処理できる場合もあり

確定申告では「証拠」と「区分」がすべて

確定申告でLAN配線工事を処理する際は、目的・金額・証憑書類(しょうひょうしょるい)の3点がカギになります

・ 青色申告なら減価償却や特例処理が可能

・ 白色申告でも20万円超は固定資産登録が必要

・ 契約書、見積書、写真などを保存しておく

・ 賃貸物件の場合は借主資産として判断

・ 修繕費と資産を明確に区分することが節税の第一歩

LAN配線工事は、通信環境の整備というだけでなく、経理処理の正確性が税務リスクを回避する鍵です
確定申告では、「工事内容を正確に説明できる資料」があれば、安心して経費計上・減価償却が行えます

次章では、さらに実務的な観点から 「領収書の整理と記録のコツ」 を詳しく解説します。

 

 

電気工事における請求書について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください!!

電気工事における請求書とは?透明性と信頼性を高めるための必須知識

 

領収書の整理と記録のコツ

LAN配線工事の費用を正確に経理処理するためには、領収書や請求書の整理・保管方法が非常に重要です
どんなに正しい勘定科目で仕訳をしても、証憑(しょうひょう)書類が適切に整理されていなければ、税務上の信頼性が損なわれる可能性があります

特にLAN配線工事は、通信費・修繕費・建物附属設備など複数の科目に分かれるため、「どの書類がどの勘定科目に該当するのか」を明確にしておくことが、決算書の整合性や税務調査への備えに直結します

この章では、領収書や帳票を正確に・効率的に・長期的に管理するためのコツを具体的に解説します。

勘定科目ごとにフォルダを分ける方法

領収書整理の基本は、勘定科目別に分類することです
LAN配線工事では、支出内容によって「通信費」「修繕費」「建物附属設備」に分かれるため、フォルダを分けて管理すると非常に効率的です。

【LAN配線工事の領収書分類フォルダ例】

フォルダ名主な内容管理のポイント
通信費LANケーブル・ルーター・モジュラージャック購入消耗品や小規模作業を分類
修繕費LAN修理・配線再接続・端子交換維持目的の工事費を分類
建物附属設備LAN新設・大規模配線工事資産計上対象を明確に保管

 

このようにフォルダを3分類しておくと、決算時や税務署対応時に「どの支出がどの目的か」一目でわかるようになります。

さらに、デジタルデータとして保存する場合には、ファイル名にも日付・業者名・工事内容を含めると管理性が格段に向上します。

   【例】:「2025-03-12_株式会社スタンドX_LAN配線新設_請求書.pdf」

このように命名しておくことで、検索性・証拠性・会計ソフト連携性 が高まり、後からの照合も容易です。

クラウド会計ソフトでの入力ポイント

最近では、freee・マネーフォワード・弥生会計オンラインなどのクラウド会計ソフトを使ってLAN工事費を管理するケースが増えています。
これらのツールを活用すれば、領収書の写真やPDFを直接アップロードして、自動仕訳を行うことも可能です。

ただし、自動分類に任せきりにすると、LAN配線工事のような複合的支出では誤分類が起こりやすいため、手動で科目修正するのが正解です。

【クラウド会計ソフトでの入力のコツ】

・ 「勘定科目」欄で 修繕費 or 建物附属設備 or 通信費を選択する

・ 「摘要」欄には工事内容、業者名、目的を具体的に記入

・ 領収書や請求書は画像添付またはPDF添付で証拠を残す

・ 「タグ」機能がある場合は “LAN配線工事”タグを付ける

【入力時の記載例】

項目入力内容補足
勘定科目修繕費小規模LAN修理の場合
摘要LANケーブル交換(株式会社〇〇電設)目的を明確に
金額20,000円税抜表示で入力
添付資料領収書PDFクラウド保存

 

クラウドソフトを活用すれば、領収書の紛失リスクを回避しながら、データの一元管理が可能になります。
また、税理士との共有もスムーズになり、決算・申告業務の効率が大幅に向上します。

経費証明としての資料保存の仕方

LAN配線工事のような外注作業を行った場合、領収書以外にも複数の書類をセットで保存しておくと税務上の信頼度が格段に上がります。

【保存すべき書類の一覧】

・ 見積書(工事の範囲、金額、目的を確認)

・ 契約書(業務委託契約や施工内容の証明)

・ 請求書(支払い金額や期日を明記)

・ 領収書(支払い証明として必須)

・ 施工写真や完了報告書(新設、修繕の違いを明確に)

これらの資料を「1案件ごと」にまとめ、紙ファイルまたはクラウド上のフォルダ単位で整理しておくと、税務調査時に「どの支出がどの工事に対応しているか」を迅速に提示できます。

【保存方法のおすすめパターン】

保存方法メリット保存期間
紙(原本)保管証拠能力が高く税務署で信頼性が高い7年間(法人税法)
スキャン保存(PDF)検索・共有が容易電子帳簿保存法に準拠
クラウドストレージ紛失リスクが低く場所を取らない電子データは7年間保持推奨

 

特に2022年以降は電子帳簿保存法の改正により、電子データでの領収書保存が正式に認められています。
ただし、電子保存を行う場合は、改ざん防止・検索性確保・タイムスタンプの要件を満たす必要があります。

つまり、LAN配線工事のような経理上重要な支出は、「紙+電子」両方でのハイブリッド管理 がもっとも安全で効率的な方法と言えます。

領収書整理は“税務対策”の第一歩

LAN配線工事の勘定科目を正しく処理するには、領収書・請求書・契約書などの証憑整理が不可欠です

・ 勘定科目ごとにフォルダ分けして分類する

・ クラウド会計ソフトで摘要、証拠を明記する

・ 見積書、契約書、写真をセットで保存する

・ 電子帳簿保存法対応でデジタル保管を推奨

・ 7年間の保存義務を忘れずに遵守

これらを実践することで、税務調査時にも慌てることなく、「誰が見ても明確な経理データ」を提示できるようになります

LAN配線工事は単なる通信インフラ整備ではなく、会計・税務処理の信頼性を高める要素でもあります。
経理担当者や個人事業主は、日頃から領収書管理を徹底し、正しい証拠と記録で税務リスクをゼロに近づけることが大切です。

 


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まとめ|LAN配線工事は「内容」で勘定科目が変わる

LAN配線工事の経理処理は、同じ“配線工事”でも内容・目的・金額によって勘定科目が変わるという特徴があります
つまり、どのような目的で行われた工事なのかを明確にすることが、正しい仕訳と税務対応の第一歩です

本記事を通して解説してきたように、LAN配線工事は「通信環境整備」であると同時に、会計上は“資産”にも“経費”にもなり得る特殊な工事です
したがって、経理担当者や個人事業主は、施工内容を正しく分類し、目的と金額に応じて勘定科目を選定することが欠かせません

作業範囲・金額・目的を明確に

LAN配線工事の会計処理を正確に行うには、まず「3つの判断基準」を明確にすることが大切です。

【LAN配線工事の勘定科目を判断する3つの基準】

判断基準内容勘定科目例
目的新設・改修・修理のどれか建物附属設備 or 修繕費
金額20万円未満 or 20万円以上経費 or 固定資産
作業範囲一部配線 or 全体構築通信費 or 建物附属設備

 

たとえば、LANケーブル1本の交換や断線修理であれば「修繕費」に分類されます。
しかし、新しいオフィスを立ち上げる際にLANを一式敷設するようなケースでは、「建物附属設備(固定資産)」として資産計上しなければなりません。

・ 維持、修理目的 → 修繕費(経費扱い)

・ 通信機器の導入や接続 → 通信費(経費扱い)

・ 新規導入、全面改修 → 建物附属設備(資産扱い)

この3つの観点を常に意識すれば、LAN配線工事の勘定科目を正しく判断できます。
また、見積書や請求書に「工事目的」を具体的に記載してもらうことで、仕訳根拠を明確化でき、税務署対応も安心です。

経理初心者でも迷わないチェックリスト付き

LAN配線工事の勘定科目を判断する際に役立つ、実践的なチェックリストをご紹介します。
このリストを活用すれば、経理初心者でも迷わず処理を行うことができます。

【LAN配線工事の勘定科目チェックリスト】

質問回答勘定科目
新規オフィスでLANを新設したか?はい建物附属設備(固定資産)
既存LANケーブルの修理をしたか?はい修繕費(経費)
小規模なケーブル追加を行ったか?はい通信費(経費)
工事費が20万円を超えるか?はい固定資産として減価償却
旧オフィスで撤去、新オフィスで新設を行ったか?はい撤去=修繕費/新設=建物附属設備

 

このチェックリストに沿って判断することで、税務上の誤りや修正申告のリスクを大幅に低減できます。
また、工事内容を説明できる証拠書類(契約書・領収書・施工写真)を添付しておけば、税務調査でもスムーズに対応可能です。

LAN配線工事の経理処理は「通信インフラ整備+資産管理」

LAN配線工事は単なるネットワーク整備ではなく、企業の通信基盤を支える重要なインフラ投資です
そのため、経理処理を正確に行うことは、企業の信頼性・財務健全性・税務リスク軽減に直結します。

・ 目的と金額で経費 or 資産を判断する

・ 勘定科目別フォルダで領収書を管理する

・ クラウド会計ソフトでデータを一元化

・ 見積書、契約書、写真を必ず保存する

・ 税務署からの質問にも資料で即対応できるようにする

LAN配線工事の経理処理を正しく行えば、単に税務対応がスムーズになるだけでなく、社内の資産管理・設備投資の明確化にもつながるという大きなメリットがあります

総括|「LAN配線工事」は設備投資でもあり、経費節税のチャンスでもある

LAN配線工事は、通信の安定性を支える投資でありながら、その内容次第では経費として即時処理できる節税対象にもなります

つまり、「どんな目的で行った工事か」を明確にすることが、節税とリスク回避の両立を実現するカギです

【重要ポイント】

・ “新設なら資産”“修繕なら経費”が基本ルール

・ 金額20万円超なら固定資産登録を検討

・ 青色申告なら30万円未満は一括償却も可能

・ 証拠書類を整えることで税務署対応も安心

LAN配線工事の勘定科目を正しく選べば、単なる会計処理を超えて、企業の通信基盤と財務戦略の両立が可能になります。

次のステップ:LAN配線工事を成功に導くために

経理処理を終えた後も、LAN配線工事の価値を最大化するためには、施工品質・保守体制・将来拡張性を見据えた運用が欠かせません。
次のステップとして、以下を意識しましょう。

・ 導入後の通信速度や安定性を定期的に測定する

・ LAN配線図や配線ルートを社内で共有しておく

・ 今後の増設やリニューアルを見越して空配管を確保する

・ 業者選定時は、施工実績、資格保有、サポート体制を確認する

LAN配線工事は、「やって終わり」ではありません
正しい会計処理と設備管理を行い、企業の成長に直結する通信インフラとして長期的に活用することが重要です

まとめのまとめ

・ LAN配線工事は通信インフラ+会計処理の両面で重要

・ 勘定科目は内容、目的、金額で判断する

・ 証憑整理と会計ソフト活用が税務対策の要

・ 修繕費、通信費、建物附属設備の区分を常に意識

・ 節税、資産管理、業務効率化を同時に実現できる

このように、LAN配線工事を「通信設備」としてだけでなく、会計上の“投資資産”として捉えることが、企業成長の基盤を強化する第一歩です

 


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