
そもそも「軽微な電気工事」とは?
「軽微な電気工事」とは、日常生活の中で発生しやすい小規模な電気作業のうち、法律で電気工事士資格を必要としない範囲の工事を指します。
外観上は簡単に見える作業でも、内部配線や電線接続を伴うものは軽微には該当しません。
そのため、「見た目が簡単だから自分でできるだろう」という判断が最も危険とされます。
軽微工事の最大の特徴は、設備の構造を変えない点と電線そのものに触れない点にあります。
つまり、器具の交換や取り付けといった限定的な範囲の作業だけが軽微となります。
この判断基準を正しく理解することで、作業の安全性を確保しつつ、費用負担も適切に抑えることができます。
法律で定義される“軽微な工事”の範囲
軽微な工事の範囲は、電気工事士法施行令によって具体的に定義されています。
その中で特に重要なのは、次の2つの条件です。
・ 電線相互の接続を伴わない作業であること
・ 電気設備の構造を変更しないこと
例えば、照明器具の交換は配線部分を触らず器具のみを取り替える場合に限り軽微となります。
同じく、家電の電源プラグを市販部品で置き換える作業も、電線の延長や内部構造の改変がなければ軽微です。
しかし、壁の中の配線へアクセスする作業やコンセント内部の配線取り扱いは法律上の軽微ではありません。
これらは電線接続や絶縁処理が必要となるため、資格者である電気工事士の作業範囲となります。
法律で明確に定められている理由は、電気工事が感電事故や火災事故と隣り合わせであるためです。
作業内容の大小にかかわらず、内部配線へ触れる可能性がある作業はすべて有資格者に限定されます。
電気工事士が不要なケース・必要なケースの違い
電気工事士資格の要否を判断する最も大きな基準は、「電線に触れるかどうか」です。
具体的には次のような分類となります。
【作業内容による電気工事士資格の要否】
| 作業内容 | 資格の必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 引掛シーリングへ照明器具を取り付け | 不要 | 配線に触れず器具のみ交換するため |
| コンセント内部の配線を扱う作業 | 必要 | 電線接続が発生するため |
| 家電プラグの交換(構造変更なし) | 不要 | 電線延長や剥離がなければ軽微に該当 |
| 電源直結タイプのインターホン交換 | 必要 | 内部配線へアクセスするため |
軽微工事は、あくまで表層部分の器具交換に留まる場合のみ資格不要です。
一方、内部配線・電線接続・絶縁処理を伴う作業は必ず資格者が対応します。
特に、「コンセント交換」は誤解が多い作業です。
カバーだけなら軽微ですが、本体交換は内部配線を扱うため資格必須です。
この違いを理解せずにDIYをすると、火災や感電の危険性が大幅に上昇します。
電気工事は“触れてよい場所”と“触れてはいけない場所”が明確に分かれており、その境界を知ることが安全の第一歩です。
初心者が誤解しやすいポイント
軽微工事における誤解の多くは、「簡単そうに見える作業=資格不要」と考えてしまう点にあります。
しかし、外観上の難易度と法的な軽微性は一致しません。
代表的な誤解は次の3つです。
1つ目は「コンセント交換は簡単だから軽微だろう」という誤解です。
実際には、内部配線に触れるため電気工事士が必須です。
誤った結線や絶縁不足は、発熱や火災の原因になります。
2つ目は「照明器具の交換ならすべて軽微」という誤認です。
引掛シーリングで取り付けられる器具は軽微ですが、天井内部の配線へアクセスする作業は軽微ではありません。
3つ目は「工具があれば誰でも行える」という思い込みです。
電気工事は電圧・容量・絶縁の知識が必要で、器具の取り付け方ひとつで安全性が変わります。
工具だけでは安全は担保されず、知識と技術が伴わなければ事故につながるリスクが極めて高いと言えます。
これらの誤解を避けるためには、「器具交換なら軽微」「内部配線に触れたら資格必須」というシンプルな基準を持つことが効果的です。
迷った場合は、プロの電気工事士に相談することで、事故を防ぎながら適正な費用で安全な施工が可能になります。
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電気工事はプロに任せるべき理由とは?
「突然、ブレーカーが落ちた」「コンセントが焦げている」「照明がチカチカする」──そんな電気のトラブル、意外と多くのご家庭やオフィスで起こっています。
しかし、これらのトラブルを自分で何とかしようとするのは非常に危険です。電気工事は国家資格が必要な作業であり、誤った対応は感電や火災の原因にもなりかねません。
また、以下のようなケースも電気工事の対象です。
・ コンセントやスイッチの増設や移設
・ 照明器具の交換やLED化工事
・ 漏電調査と対応
・ 分電盤やブレーカーの交換
・ エアコン専用回路の新設
こうした専門性の高い電気工事は、必ず資格を持つ業者に依頼することが鉄則です。
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よくある電気工事のトラブル例と対応事例
1. コンセントが焦げている・熱を持っている
→ 原因:配線の接触不良や電力オーバー
→ 対応:配線の交換、コンセントの安全基準対応への交換
2. エアコン設置の際に電源が足りない
→ 原因:専用回路が未設置
→ 対応:分電盤から専用回路を新設し、安全に使用可能に
3. 築年数の古い住宅での漏電調査
→ 原因:経年劣化やシロアリによる断線
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軽微な工事の具体例一覧
前章では、軽微な電気工事が「設備の構造を変えない作業」であり、「電線に触れない作業」に限定されることを解説しました。
ここからは、その定義を踏まえたうえで、実際の家庭やオフィスで多く発生する軽微な工事の具体例を詳しく紹介します。
軽微工事の内容を理解しておくことで、「どこまでが自分でできる範囲なのか」「どこから業者に依頼すべきなのか」が判断しやすくなります。
初めて電気作業に触れる方でもイメージしやすいよう、日常でよく見られるケースを中心に整理しました。
スイッチ交換/コンセント交換
スイッチやコンセントに関する作業は、住宅内で特に多い電気関連作業です。
ただし、この分野は“見た目が簡単”に感じられるため、誤解が生じやすいポイントでもあります。
まず、外側のプレート(カバー)だけを交換する作業であれば軽微工事に該当します。
カバーの破損や日焼け、インテリア変更に伴う交換などは工具も最小限で済み、危険性もほとんどありません。
一方で、
・ スイッチ本体の交換
・ コンセント本体の交換
・ 内部配線に触れる作業
これらは軽微工事には該当せず、電気工事士の資格が必須です。
スイッチ本体やコンセント内部には電線が直接接続されており、取り外しや再接続の工程が発生します。
誤った結線はショート・発熱・発火など重大事故につながる可能性があります。
【軽微に該当する作業】
・ スイッチカバーの交換
・ コンセントカバーの交換
・ 外観のみを変更する簡易DIY
【軽微に該当しない作業】
・ スイッチ本体の交換
・ コンセント内部の配線作業
・ 新しい位置へのスイッチ増設
なお、近年普及しているUSB内蔵コンセントへの交換も本体交換に該当するため、必ず資格者に依頼すべき作業です。
作業の規模ではなく、“電線に触れるかどうか”を基準に判断することが安全につながります。
照明器具の取り付け・取り替え
照明器具の取り替えは、軽微工事の代表的なケースです。
多くの家庭には「引掛シーリング」と呼ばれる取り付け器具が天井に設置されており、この器具に照明器具を引っ掛けるだけで交換が完了します。
この場合は配線に触れず、差し替えのみで作業が完結するため資格は不要です。
【軽微に該当する照明作業】
・ 引掛シーリングへの照明器具の交換
・ 既存器具を外して新しい器具を取り付ける作業
・ 電球やLEDランプの交換
ただし、注意点もあります。
天井内部の配線に触れる作業は軽微工事には該当しません。
たとえば
・ ダウンライトの新設
・ 照明位置の移動
・ 配線の延長
などの作業は、完全に電気工事士が行うべき工事です。
また、重いシャンデリアなどの大型照明も取り付け難易度が高いため、軽微工事であっても専門業者へ依頼した方が安全です。
照明は重量・固定方法・絶縁など複数の要素が関わるため、「軽微=安全」とは限らない点にも注意が必要です。
インターホン交換・LAN配線の軽微作業
近年は住宅の防犯性向上やネット環境整備により、インターホンやLAN関連の作業も増えています。
これらはいわゆる「弱電」に分類される設備であり、電線を外したり接続したりしない場合に限って軽微の範囲に収まります。
インターホンの場合、乾電池式やコンセント給電式の機器で、既存の子機を外して同じタイプへ差し替えるだけであれば資格は不要です。
またLAN周りも、市販ケーブルの取り回しやルーター周辺の整理、プレートの交換などの作業は軽微工事として扱われます。
ただし、以下のように内部配線へ触れる作業は軽微には該当しません。
【資格が必要なケース】
・ 電源直結型インターホンの設置や交換
・ 壁内配線の延長や移動
・ LANコンセントの新設
・ ジャック交換を伴う内部配線作業
特に電源直結型インターホンは電線を端子に結線する工程があるため、必ず資格者へ依頼しましょう。
弱電とはいえ、誤った施工は機器の故障やショートにつながる恐れがあります。
家電の電源プラグの修理(特定条件下)
家電の電源プラグ交換は、一定の条件を満たす場合のみ軽微工事として認められています。
コードが断線している、プラグが破損しているなどのトラブルで、市販されている交換用プラグを使用して付け替える作業がこれにあたります。
ただし、軽微であるためには次の条件を満たす必要があります。
【軽微に該当する条件】
・ 電線を延長しない
・ 電線の構造を変更しない
・ 絶縁処理を確実に行う
・ 適合した交換用プラグを使用する
上記の条件を満たさず、コードの延長や内部配線の接続を伴う場合は軽微工事ではなく、電気工事士資格が必須です。
家電のプラグは高負荷がかかりやすく、わずかな施工不良でも発熱・発火につながります。
DIYで対応する場合は、必ず条件内で行うことが重要です。
不安がある場合は専門家に相談しましょう。
一般家庭で実際に多いケースTOP5
家庭内で特に相談の多い軽微工事を、ランキング形式でまとめました。
【軽微な工事の相談ランキング】
| 順位 | 作業内容 | 軽微性の判断 |
|---|---|---|
| 1 | 照明器具の交換 | 配線に触れなければ軽微 |
| 2 | インターホン子機の交換 | 同タイプの差し替えなら軽微 |
| 3 | 家電プラグの交換 | 条件付きで軽微 |
| 4 | LANケーブルの取り回し | 弱電で配線に触れなければ軽微 |
| 5 | スイッチ・コンセントのカバー交換 | 外観のみなら軽微 |
これらの作業は日常でよく発生しますが、「軽微かどうか」の境界が曖昧なケースも多く存在します。
特に、“内部配線に触れるかどうか”という基準を誤ると、事故リスクが一気に高まる点は重要です。
軽微工事の範囲を正しく理解すれば、安全性を確保しつつ費用負担を適切に抑えた住宅メンテナンスが可能になります。

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