LAN配線 オフィス

2024.05.22

オフィスのLAN配線設計|固定席・フリーアドレス・会議室の配置

 

オフィスのLAN配線を見直すとき、「社員の人数分だけ差し込み口があれば十分」と考えていないでしょうか。同じ30人の職場でも、固定席が中心の会社と、毎日席を選ぶフリーアドレスの会社では、必要な配線の位置も数もまったく違います。オンライン会議が多い職場であれば、会議室や個室ブースの接続も重要になります。

席の近くにLAN口があっても、机を動かすたびにケーブルが通路を横切るようでは使いにくいものです。反対に、あらゆる場所へ多めに配線しておけば安心かというと、そうとも限りません。使わない端子や管理者の分からない機器が増えると、席替えやトラブルのたびに調べる手間が増えてしまいます。

大切なのは、今の業務を安定して支えながら、増員や席替えのときにも無理なく変更できる配線にすることです。そのためには、ケーブルの性能だけでなく、机の配置、接続する機器、会議の進め方、工事中の業務継続、完成後の管理までを一緒に考える必要があります。

この記事では、総務担当者や社内のIT担当者に向けて、働き方に合ったオフィスのLAN配線を設計する方法を解説します。

この記事でわかること

・ 固定席、フリーアドレス、会議室で、配線の考え方がどう違うか
・ 必要なLAN口の数と、スイッチやPoE給電の容量を見積もる手順
・ 席替えや移転で業務を止めないための切り替え方
・ 完成後の確認方法と、配線を増やし続けないための管理ルール
・ 設計担当者や工事会社へ伝えるべき社内の条件

なお、工事の進め方や費用の内訳は別の記事で詳しく扱っています。この記事では、レイアウトと運用の観点から配線をどう計画するかに絞って説明します。

 

オフィスのLAN配線は「人数」ではなく「使い方」で設計する

どの業務をどこで行うかを一覧にする

配線計画の出発点は、社員名簿ではなく業務の一覧です。営業担当者が提案資料を作る席、経理担当者が基幹システムへ接続する席、設計担当者が大きな図面データを扱う席では、求められる接続の条件が異なります。

たとえば、メールとクラウド上の文書編集が中心の席と、社内の保存装置へ動画データを頻繁に送る席を、同じ条件で扱う必要はありません。利用するサービスとデータの流れを整理すると、通信性能を優先したい場所と、配置の自由度を優先したい場所が見えてきます。

まずは、エリアごとの使い方と優先事項を次のような表にまとめてみましょう。

エリア主な使い方配線設計で優先したいこと
固定席同じ端末で毎日の業務を行う机までの配線の保護と、管理のしやすさ
フリーアドレス席利用者と端末が日によって入れ替わる接続方法の統一と、抜き差しのしやすさ
会議室・個室ブース複数人での会議や画面共有を行う常設機器と持ち込み端末の接続の整理
集中作業席大容量データや専門業務を扱う保存先までの経路と、必要な通信性能
受付・共用部来客対応や共用機器の利用社内ネットワークへ接続できる範囲の管理

社内で先に整理しておきたい4つの項目

技術的な数値が分からなくても、社内で決められることは多くあります。設計担当者へ相談する前に、次の4項目を整理しておくと話が具体的になります。

項 目整理する内容の例
場所どのフロア、どのエリア、どの部屋か
利用する人部署、人数、出社の頻度
接続する機器パソコン、IP電話、ドック、複合機、会議端末、アクセスポイントなど
止まると困る業務月末の締め処理、顧客とのオンライン会議、受注システムの入力など

 

「会議中の切断だけは避けたい」「締め日の午後は工事をしないでほしい」といった業務上の条件は、配線の仕様と同じくらい重要な設計情報です。

「設置する口数」「すぐ使う接続」「将来分」を分けて数える

机に設けるLAN口の数と、スイッチで同時に使うポートの数は、必ずしも一致しません。将来用のLAN口を先に設けておき、使い始めるまではスイッチにつながない運用もよく行われます。

一方で、在籍人数だけを根拠にスイッチの容量を決めるのも適切とはいえません。オフィスにはパソコン以外にも、複合機、会議端末、アクセスポイント、IP電話などが接続されるからです。

社内資料では、次の3つを分けて記載しておくと、設備の過不足を検討しやすくなります。

区 分意 味記載しておくとよい理由
設置する口数壁や床、机に実際に設けるLAN口の数配線工事の範囲を決める基準になる
運用開始時の接続数初日からスイッチにつないで使う数スイッチのポート数や給電容量の基準になる
将来追加する数増員や用途変更で使う予定の数予備の妥当性を後から説明できる

 

予備を設ける理由まで書き残しておけば、予算の見直しや担当者の交代があっても、判断の経緯を引き継げます。

 


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固定席のLAN配線は、机の動きと機器の組み合わせで決める

椅子を引いた状態や昇降デスクの動きまで確認する

固定席では、平面図で机の位置を確認するだけでは不十分です。椅子を引いたときの足元、引き出しを開けたときの動き、清掃で物を動かす範囲まで確認しましょう。図面上では問題がなくても、実際には足で踏む位置に差し込み口が来てしまうことがあります。

机の島へ配線を引き込む位置は、通路側ではなく、家具の配線経路へ自然につながる場所を候補にします。あわせて、次の点を確認しておくと安心です。

・ 机の脚や収納ワゴンにケーブルが挟まれないか
・ 昇降デスクを最も高くしたとき、ケーブルが引っ張られないか
・ 床のOAフロアの開口位置と、机の配線ダクトの位置が合っているか
・ 清掃時に床のケーブルを動かす必要がないか

余ったケーブルを床に長く這わせておくと、席替えのときに扱いにくくなります。机の配線トレーなどで余長をまとめ、必要な可動範囲だけを確保する形が理想です。固定方法や曲げ方は、使用するケーブルと家具の仕様に合わせて決めてください。

パソコン・電話機・ドックを一組の接続として考える

一人の社員が使う機器でも、必要な接続が一つとは限りません。デスクトップパソコンとIP電話を別々につなぐ席もあれば、ノートパソコンをドッキングステーション経由でつなぐ席もあります。代表的な構成を整理すると、次のようになります。

席の構成必要なLAN口の目安確認しておきたい点
ノートパソコンのみ(Wi-Fi中心)0〜1口有線を使う場面があるか、予備を残すか
ノートパソコン+ドック1口実際に使うドックとパソコンの組み合わせで動作するか
デスクトップ+IP電話(別々に接続)2口電話機へのPoE給電が必要か
デスクトップ+IP電話(電話機経由で接続)1口電話機の対応可否、通信速度、ネットワーク設定
専用端末を併用する席(業務用プリンターなど)2口以上端末ごとの接続先とネットワークの区分

 

IP電話の中には、電話機を経由してパソコンをつなげる機種があります。ただし、その構成で十分な通信速度が出るか、給電やネットワークの設定に問題がないかは、機種と運用条件によって異なります。「電話があるから一席二口」「電話経由なら一口で十分」と一律に決めないことが大切です。

ドックを使う場合も、パソコン単体での確認だけで済ませないようにしましょう。実際に使うドック、変換アダプター、LANケーブルを組み合わせ、接続した直後やスリープから復帰した後にも業務ができるかを確かめます。

端子番号は「人」ではなく「場所」で付ける

固定席の端子を社員の氏名で管理すると、異動や入退社のたびに表示を書き換えることになります。端子には場所を示す番号を付け、利用者や部署は管理表で対応させる方法が扱いやすいでしょう。

たとえば、次のような規則が考えられます。

端子番号の例意 味
3F-E-03-13階・東エリア・3番目の島・1番目の口
3F-E-03-23階・東エリア・3番目の島・2番目の口
3F-MR1-013階・会議室1・1番目の口

 

重要なのは、高度な番号体系をつくることではありません。現場の表示、ケーブルの表示、管理表の記載が一致していることです。端子番号を変えずに利用者の情報だけを更新できれば、通信不良が起きたときにも「営業部の誰の席か」から調べ直す必要がなくなります。配線の位置と人の配置を分けて管理することが、変更しやすいオフィスにつながります。

 

 

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LAN配線とは?ネットが遅い・不安定を解決する有線化のすすめ

 

フリーアドレスのLAN配線は、毎日の接続操作まで設計する

有線席の数は、在籍人数ではなく出社のピークで決める

フリーアドレスのオフィスでは、社員全員の人数をそのまま有線の接続数にする必要はありません。ただし、平均の出社人数だけで考えると、全社会議や研修の日に席が足りなくなるおそれがあります。

まず、席を次のように分類します。

・ 有線接続を用意する席
・ Wi-Fiを基本にする席
・ オンライン会議に使う席やブース

そのうえで、有線が必要な業務の人が、最も多く同時に出社する日を確認します。たとえば、フリーアドレス対象の社員のうち、大容量データを扱うなどの理由で有線を必要とする人が5人いて、そのうち同時に出社するのが最大4人であれば、有線席は4席が一つの目安になります。平均値ではなく、業務上対応したい混雑日を基準にするのがポイントです。

有線席を一部に集める場合は、誰が優先的に使えるのか、予約できるのかも決めておきましょう。必要な人が座れなければ、設備を用意した意味がありません。配線の配置と座席の利用ルールは、一緒に整理します。

どの席でも同じ方法で接続できるようにする

フリーアドレスでは、利用者が毎回違う席で接続します。席ごとにドックやケーブルの種類が違うと、端末との相性確認や問い合わせが増えがちです。会社で使うパソコンとの適合を確かめたうえで、接続方法をそろえておくと案内しやすくなります。

机上に出すケーブルは、手に取りやすい位置で保持し、床に落ちにくい形にします。コネクターが傷んだときに、利用者が壁や床の配線に触れず、机上のコードだけを交換できる構成にしておくと保守も簡単です。

案内表示は、利用者が迷いやすい場面に絞って設けます。長い取扱説明書を置くより、「ドックのケーブルをパソコンの右側に差す」といった、席で行う操作を短く示したほうが伝わります。統一する機器の範囲と、例外として扱う端末も記録しておきましょう。

席を移っても認証と利用範囲が保たれるか確認する

パソコンを別のLAN口につなぎ直したとき、以前と同じように使えるとは限りません。場所ごとにネットワークを分けている場合や、登録した端末だけに接続を許可している場合は、移動後の認証や利用範囲を確認する必要があります。

総務担当者は、「どの席でも社員用のサービスが使える」「来客用の席からは社内の保存装置へ接続させない」など、必要な動作を言葉で整理します。IT担当者は、その条件を機器の設定や認証方式へ反映します。

席替えのたびに設定変更を依頼する運用にするのか、会社の端末であれば許可された範囲で自由に移動できる運用にするのかによって、設計は大きく変わります。導入時には、最初の席で接続できることだけでなく、別の席への移動、再接続、スリープからの復帰まで確認しておきましょう。

 


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会議室・個室ブースは、会議の進め方に合わせて配線する

常設端末と持ち込みのパソコンを分けて考える

会議室での参加方法には、常設の会議端末を使う方法と、参加者が持ち込んだノートパソコンを使う方法があります。この二つを曖昧にしたまま配線すると、利用者が常設端末のケーブルを抜いて自分のパソコンに差し替える、といった運用が生まれかねません。

接続の種類主な機器配線の考え方
常設機器会議端末、カメラ、ディスプレイ、会議室予約パネル利用者が触れない位置で接続を保護する
持ち込み端末参加者のノートパソコン机上に専用の接続位置を設け、表示で区別する
映像の接続HDMIなどの映像ケーブルネットワークの接続とは別に用意する

 

ディスプレイに映像が映っただけでは、オンライン会議への接続確認は終わりません。会議の開始から画面共有、音声の入出力まで、実際の利用手順で試すことが大切です。

机のレイアウト変更や可動間仕切りを織り込む

会議室の机を、対面形式や研修形式に組み替える職場は少なくありません。ある一つの配置だけを前提にLAN口の位置を決めると、別の配置にしたときにケーブルが通路を横断してしまいます。通常の配置に加えて、よく使う変更後の配置も図面に描き込んでおきましょう。

可動間仕切りで部屋を分ける場合は、分割した状態でそれぞれの部屋が使えるかを確認します。LAN口や常設機器が片側にしかないと、分割時にもう一方の部屋で会議ができなくなる可能性があります。

個室ブースは、将来の移設や入れ替えも考慮します。ブース側の仕様、電源との取り合い、接続口の位置を確認し、移設時にどこを外すのかを決めておきます。家具の選定が終わる前に配線の出口だけを確定させないよう、内装の担当者とIT担当者で情報を共有してください。

複数の会議室が同時に使われる時間帯で確かめる

会議室を一室だけ使ったときに問題がなくても、複数の部屋が同時に使われたときの状態は別に確認する必要があります。執務エリアでもオンライン会議やファイルの同期が動いていれば、共通の機器や回線に通信が集中するからです。

事前に会議室の予約状況を見て、何室が同時に使われることが多いのか、自席から会議に参加する人が何人いるのかを把握しておきます。導入後の確認も、実際の勤務状況に近い時間帯に行うと、業務上の問題を見つけやすくなります。

評価するのは速度測定の数値だけではありません。音声が聞き取れるか、映像が止まらないか、画面共有をスムーズに切り替えられるかを確認します。問題が見つかった場合は、端末、会議サービス、Wi-Fi、社内の機器、外部回線のどこを調べるかを順に切り分けていきます。

 

 

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LAN配線工事は電気工事会社に頼める?内容・費用・業者選びを解説

 

執務用・来客用・設備用の接続範囲を整理する

同じ部屋にある機器でも、同じネットワークにしない

オフィスには、社員のパソコンだけでなく、来客の端末、会議端末、プリンター、防犯カメラ、入退室管理機器などが置かれています。同じ部屋にあることと、同じ情報にアクセスできることは別の話です。

用途ごとに接続範囲を整理すると、次のようになります。

区 分主な機器許可する通信の例
執務用社員のパソコン、IP電話業務システム、社内の保存装置、インターネット
来客用来訪者のスマートフォンやパソコンインターネットのみ
会議用会議端末、会議室予約パネル会議サービスと管理用の接続先
設備用防犯カメラ、入退室管理機器、複合機その機器に必要な接続先と、管理者の操作経路

 

たとえば、来客がインターネットを使えればよい場所で、社内のファイルサーバーまで利用できる状態にしておく必要はありません。設計の段階で、どの端子をどの用途に使うかを決めておくと、施工後の機器設定へスムーズにつなげられます。配線の担当者だけで決めるのではなく、社内の情報管理ルールを把握している担当者にも確認してもらいましょう。

ケーブルの色分けだけではセキュリティは守れない

用途ごとにケーブルの色を変える方法は、現場で見分ける助けになります。ただし、色を変えただけでは通信を制限できません。必要に応じてVLANなどでネットワークを分け、ネットワーク間のアクセスを制御する必要があります。

また、VLANを作っただけで、来客用の接続から社内への通信を防げるわけでもありません。ルーターやファイアウォールの設定、無線LANの設定、各ポートへの割り当てを含めて、許可した範囲だけ通信できるかを確認することが欠かせません。来客用の接続を分ける場合は、経路とアクセス制御を一体で設計することが大切です。

社内向けの資料に、設定の細部をすべて書く必要はありません。「来客はインターネットのみ」「会議端末は会議サービスと管理先へ接続」のように、目的と許可範囲を記載しておけば、設定を変更するときの判断材料になります。

共用部のLAN口・未使用ポート・ラックの扱いを決める

受付や廊下など、誰でも近づける場所にあるLAN口は、利用目的を明確にしておきます。使う予定のない端子まで常に有効にしておくかどうかは、社内の方針に合わせて判断してください。

端子が見えていることと、実際に使えることを分けて管理すれば、将来用の配線を残しながら接続できる範囲を限定できます。端子を有効にする手続きや用途変更の窓口を決め、申請された機器と接続先を記録する運用が考えられます。

ネットワーク機器を収めたラックについても、清掃や備品の保管のために誰でもケーブルを触れる状態は避けたいところです。鍵を保管する人と作業できる担当者を決め、必要なときには作業できるようにしつつ、意図しない抜き差しを防ぎましょう。

 


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通信性能は、各席から利用先までの「経路」で判断する

遅さや切断の原因は、経路のどこにあるかで変わる

オフィスの通信は、パソコン、ドック、机上のケーブル、壁や床の配線、スイッチ、ルーター、外部回線と、いくつもの区間を経由します。社内の保存装置を使う場合と、インターネット上のサービスを使う場合とでは、通る経路も異なります。

症状から疑う区間を整理すると、次のようになります。

症 状まず疑う区間最初に行いたい確認
特定の席だけ遅い・切れる机上のケーブル、端子、その席までの配線同じ端末を別の席でつないで比べる
社内の保存装置へのコピーだけ遅い保存装置とその接続、スイッチ間の区間インターネット利用時の速度と比べる
全員の外部サービスが遅い外部回線、ルーター社内の通信に問題がないかを確認する
決まった時間帯だけ会議が途切れる共通の区間の混雑、バックアップや同期その時間帯に動いている処理を調べる
Wi-Fiの席だけ不安定アクセスポイント、電波環境、その上流の配線有線でつないだ場合と比べる

 

たとえば、社内の保存装置との通信が遅い場合、インターネット回線を変更しても改善しないことがあります。反対に、外部回線の混雑が原因なら、机までのLANケーブルを交換しても問題は残ります。特定の席だけで症状が出る場合は、ケーブルの断線や端子の不良も疑われます。症状の見分け方は、<LANケーブルの断線の見分け方>も参考にしてください。

設計の段階では、「どの端末から、どの保存先やサービスへ、どのような作業をするか」を整理します。大きなファイルの保存時間を短くしたいのか、会議中の切断を減らしたいのかによって、調べるべき区間と改善すべき箇所が変わります。

各席の速度と、集約される区間の混雑を分けて考える

各席が高速で接続できていても、多くの席から同じ保存装置へ同時に通信すれば、途中の共通区間が混雑することがあります。机ごとの接続速度だけでなく、スイッチどうしの接続や、保存装置側の接続も確認しましょう。

ただし、全席の接続速度を単純に足した数値が、そのまま必要な回線速度になるわけではありません。全員が常に最大速度で通信するとは限らないからです。利用が重なる時間帯、業務のピーク、バックアップや同期の時間帯を合わせて判断します。

改善の方法も、機器の交換だけではありません。大容量のバックアップを会議の少ない時間帯へ移す、特定の処理を分散させる、といった運用の見直しが効果を発揮する場合もあります。設備投資と使い方の調整を合わせて検討すると、問題に合った対策を選びやすくなります。

配線のカテゴリと距離の基本を押さえる

既設の配線は、古いという理由だけで一律に交換するのではなく、部材、状態、試験結果、目標とする通信方式を確認して判断します。現在の業務で支障がない区間と、今後の性能が不足する区間を分けて整理しましょう。

設計時の目安として、代表的なカテゴリの扱いを整理すると次のとおりです。

カテゴリ対応する主な通信方式設計上の扱い
Cat5e1GBASE-T、条件によっては2.5GBASE-T既設の場合は、状態と試験結果を確認して継続利用を判断する
Cat61GBASE-T、条件によっては5GBASE-T10GBASE-Tは距離や周囲の配線条件に左右されるため、個別の確認が必要
Cat6A10GBASE-T(100mのチャネル)新設で10GBASE-Tへの対応を見込むなら、検討の基本になる

 

新設で100mのチャネル全体にわたって10GBASE-Tへの対応を計画する場合は、Cat6Aが基本になります。一方、Cat6で10GBASE-Tを使えるかどうかは、距離や周囲の配線との干渉などに左右されるため、「短ければ必ず使える」とは言い切れません。

カテゴリは、ケーブル単体ではなく、端子やパッチパネルを含めた配線全体で考えます。また、シールドの有無とカテゴリは別の条件です。上位のカテゴリだからといってシールド付きとは限らないため、使用環境と採用する配線システムに合わせて選定してください。

 

 

予備配線と機器容量は「どこが増えるか」で考える

予備は5つの要素に分けて確認する

将来への備えを「予備のLAN口を増やすこと」だけで考えると、実際に増設するときに別の不足が見つかることがあります。たとえば、LAN口は空いていても、機器を置く棚や電源、給電容量が足りないといったケースです。

予備は、次の5つに分けて確認しましょう。

予備の要素確認する内容不足したときに起きること
接続口机や壁、床に設けたLAN口増席した場所まで配線工事が必要になる
スイッチのポートすぐに使える空きポート機器の追加や交換が必要になる
給電容量PoEで供給できる電力の余裕新しいアクセスポイントや電話機を追加できない
設置空間と電源ラックや棚の空き、コンセントの数機器を置く場所の確保から始めることになる
配線経路天井内や床下、配管の空きケーブルを通す経路の新設が必要になる

 

増員の予定がない受付へ多くの予備線を設けるより、増席が決まっている執務エリアの経路を確保するほうが合理的な場合もあります。部署ごとの計画を聞き、確定している変更と、可能性があるだけの変更を区別することが大切です。席の追加で配線の増設が必要になった場合の進め方は、<有線LANの増設工事>の記事でも解説しています。

PoEは「ポートの数」ではなく「合計の給電量」で見る

PoEは、LANケーブルを通して対応機器へ電力を供給する仕組みです。アクセスポイント、IP電話、ネットワークカメラなどに広く使われています。ただし、PoE対応のスイッチであれば何台でも機器をつなげるわけではありません。

主なPoEの規格と、給電できる電力の目安は次のとおりです。

規 格一般的な呼び方給電側の最大出力(1ポート)受電側で使える最大電力主な機器の例
IEEE 802.3afPoE15.4W12.95WIP電話、小型のカメラ
IEEE 802.3atPoE+30W25.5Wアクセスポイント、高機能カメラ
IEEE 802.3bt(Type 3)PoE++60W51W高性能なアクセスポイント、会議端末
IEEE 802.3bt(Type 4)PoE++90W71.3W消費電力の大きい機器

 

確認したいのは、機器ごとに必要な給電方式、ポートごとの供給条件、そしてスイッチ全体の給電予算です。対応ポートが空いていても、同時に供給できる合計電力に余裕がなければ、新しい機器は追加できません。

計算の考え方を、仮の数値で示します。スイッチによっては、機器の実際の消費電力ではなく、機器の区分(クラス)に応じた最大値で電力を確保する場合があります。

接続する機器(仮の例)台数1台あたりに確保する電力合計
アクセスポイント(PoE+のクラス4)3台30W90W
IP電話(クラス2)10台7W70W
合計——160W

 

この例では、給電予算が120Wのスイッチを選ぶと、ポートが足りていても全台に給電できません。実際の計算では、採用する機器とスイッチの仕様書に基づいて確認してください。電力が不足すると、起動はしても一部の機能を制限する機器もあります。電源が入ったことだけで判断せず、予定している機能が使えるかまで検証しましょう。

Wi-Fiを増強するときは有線側も確認する

フリーアドレス化でWi-Fiの利用が増えた場合、アクセスポイントを増やすだけでは十分でないことがあります。設置位置、周囲の電波環境、同時に接続する端末の数、そしてアクセスポイントから先の有線接続を合わせて確認する必要があります。

新しいアクセスポイントの有線ポートが従来より高速な規格に対応していても、接続先のスイッチや配線が条件を満たしていなければ、その性能は生かせません。無線機器の更新と有線側の設計は、別々に進めないようにしましょう。

有線とWi-Fiは、どちらか一方を選べばよいという関係ではありません。移動の多い端末は無線、常設の機器は有線というように、用途に応じて組み合わせます。それぞれの特徴は、<有線LAN接続とWi-Fiの違い>で詳しく解説しています。なお、有線でつながっているからといって、アクセス管理や端末のセキュリティ対策が不要になるわけではありません。

 

設計例|固定席とフリーアドレスを併用する36席のオフィス

座席と共用機器の条件を整理する

ここでは、36席のオフィスを想定して、設計の考え方を具体的に示します。実在の施工事例や標準的な仕様ではなく、社内で条件をまとめるための仮の例です。数値をそのまま別のオフィスに当てはめるものではない点にご注意ください。

想定するオフィスの条件は次のとおりです。

・ 固定席が24席、フリーアドレス席が12席
・ 固定席は全席で有線を利用する
・ フリーアドレス席のうち4席に有線を用意し、残りの8席はWi-Fiを基本にする
・ 会議室は2室で、それぞれに常設の会議端末と、参加者向けの有線口を設ける
・ 半年以内に固定席を4席増やす予定がある

この条件をもとに、LAN口の数を整理すると次のようになります。

用 途設置する接続口運用開始時の接続数PoE給電
固定席24口24不要(電話機を使う場合は要確認)
フリーアドレスの有線席4口4不要
会議室(常設端末・持ち込み用)4口4会議端末の機種による
複合機2口2不要
アクセスポイント3口3必要
増席予定エリアの予備4口0(当初は接続しない)不要
合計41口37—

 

この表は、端末などへ向かう接続だけを数えたものです。スイッチどうしの接続、ルーターへの接続、保存装置や管理用の機器などは、実際の構成に応じて別に加えます。また、アクセスポイント3台という数も仮の条件であり、面積や人数から適正な台数を算出したものではありません。

接続の数だけで機器構成を決めない

「37接続だから、48ポートのスイッチ1台でよい」と結論を急がないようにしましょう。必要なPoEのポート数と給電予算、会議端末の条件、上位の機器への接続、将来の増設を確認したうえで、機器構成を検討します。

スイッチを1台に集約すれば管理は単純になりますが、その1台が止まったときの影響は大きくなります。複数台に分ける場合も、台数を増やしただけで障害に強くなるわけではありません。電源や上位の機器を共有していれば、共通の原因で同時に停止する可能性があります。

どこまでの停止なら許容できるか、復旧するときにどの業務を優先するかを決め、その方針を構成と予備機の考え方へ反映させます。小規模なオフィスでも、判断の基準を記録に残しておく意味は十分にあります。

将来の変更を、図面の上で一度試しておく

この例で固定席を4席増やす場合、予備の4口を使うだけで済むでしょうか。実際には、次のような点も確認が必要です。

予定される変更確認すること
固定席を4席増やす机を置く位置と予備口の位置が合うか、電源と通路幅を確保できるか
フリーアドレス席の一部を打ち合わせスペースにするアクセスポイントの配置や、周辺の通信量が変わらないか
会議室を1室増やす会議端末のPoE給電と、スイッチの空きポートが足りるか

 

予定される変更を図面に書き込み、追加工事が必要になる箇所をあらかじめ把握しておきます。予備が役立つかどうかは、本数だけでは決まりません。「どの変更に対応するための予備か」を説明できる設計にしておくと、今の投資と将来の負担を比べやすくなります。

 


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席替え・移転のときは、業務の切り替え手順を先に決める

配線の施工と、接続先の切り替えを分けて計画する

営業中のオフィスでLAN配線を変更するときは、ケーブルを通す物理的な施工と、端末の接続先を実際に切り替える作業を分けて計画します。新しい配線の準備が済んでいても、既存機器の取り外しや設定変更の際に通信が止まる可能性があるからです。

先に施工と試験を済ませられる範囲を確保し、接続先を切り替える時間帯は別に設定します。ただし、天井や床の作業音、立ち入りの制限、電源設備への影響などで業務に支障が出ることもあります。通信が止まらないかどうかだけで、作業してよいと判断しないようにしましょう。

部署ごとに切り替えられる構成であれば、限られたエリアで動作を確認してから対象を広げる方法も考えられます。ネットワークの構成によっては一括での変更が必要な場合もあるため、どの単位で実行できるかをIT担当者と確認しておきます。

続行か切り戻しかの判断基準と、戻すための時間を確保する

切り替えの計画には、うまくいかなかった場合の対応も含めておきます。何時までに何を確認できれば続行し、どの状態なら元の構成へ戻すのかを決めておけば、当日の判断に迷いません。

休日に切り替えを行う場合の時間配分の例を示します。

時刻(例)作業内容
9:00作業前の状態を記録し、機器の設定をバックアップする
10:00新しい配線へ接続先を切り替える
12:00機器の設定を変更し、各部署の代表的な操作を確認する
15:00続行するか、元の構成へ戻すかを判断する(判断の期限)
15:00〜18:00元へ戻す場合の作業時間として確保しておく

 

ポイントは、判断の期限を作業終了の予定時刻より前に置くことです。終了予定の時刻まで改善作業を続けてしまうと、元へ戻す時間が残りません。

作業前には、元のポート番号、ケーブルの接続先、機器の設定などを記録しておきます。写真だけでは判別しにくい接続もあるため、対応表や設定のバックアップと組み合わせましょう。新しい接続の確認が終わるまでは、復旧に必要な旧配線を撤去しないことも検討してください。

パソコン以外の機器と業務も確認する

パソコンでウェブページが開けても、業務全体の切り替えが完了したとは限りません。切り替え後は、次のような項目を確認します。

確認の対象確認する操作の例
パソコン業務システムへのログイン、社内の保存装置へのファイル保存
複合機各部署からの印刷、スキャンしたデータの保存
IP電話内線と外線の発着信、転送
会議端末会議への参加、画面共有、音声の入出力
認証・ネットワーク端末の認証、IPアドレスの取得、来客用ネットワークの分離

 

端末のIPアドレスを自動で取得する運用と、固定で設定する運用が混在している場合は、ネットワークの変更による影響を事前に整理しておきます。アドレスが変わることで、印刷先や接続許可の設定を見直す必要が出てくる場合があるためです。

回線、電話、社内システムの保守をそれぞれ別の会社に依頼している場合は、切り替え当日の連絡先と対応時間を共有しておきましょう。「配線は終わったのに、設定を変更できる担当者がいない」という事態を避けるため、作業の担当範囲と立ち会いの要否を事前に決めておきます。

 

完成後の確認は「配線・接続・業務」の三段階で行う

三段階の確認で、それぞれ何を見るか

完成時の確認は、配線そのもの、機器の接続、実際の業務という三つの段階に分けると、確認漏れを防げます。

段 階確認する内容主な担当
配線の試験結線、断線、規格の性能条件への適合工事会社
接続の確認リンク速度、アドレスの取得、認証、PoE給電IT担当者
業務の確認ファイル保存、印刷、会議、業務システムの操作各部署の確認担当者

配線の試験は、どの種類の試験かを明確にする

配線の試験には、目的の異なるいくつかの種類があります。「テスト済み」という言葉だけでは、どこまで確認したのかが分かりません。[4]

試験の種類確認できること
導通・結線の確認断線や誤配線がないか
通信方式への対応の確認特定の通信方式(例:1GBASE-T)で使えるか
認証試験配線のカテゴリが定める性能条件に適合しているか

 

どの範囲をどの条件で試験するのか、結果をどの端子番号に対応させるのかを事前に決めておきます。予備口を含めて施工した配線すべてを確認するのか、機器をつなぐ口だけを対象にするのかも、明確にしておきましょう。

また、一般的な構内のツイストペア配線では、壁や床に固定された部分(パーマネントリンク)が90m、機器用のコードなどを含めた全体(チャネル)が100mを設計上の基本とします。両者を混同せず、採用する構成や部材の条件に合わせて確認してください。

接続の確認は、実際に使う機器で行う

試験器で配線を確認できても、実際に使う端末やドックとの接続確認は別に行います。予定した速度でリンクしているか、IPアドレスを取得できるか、認証を通過できるかを確かめてください。

PoEで給電する機器は、電源が入ることだけでなく、必要な機能が有効になっているかまで確認します。会議端末であれば会議サービスへ接続できるか、複合機であれば各部署から利用できるかを確かめます。

フリーアドレスのように場所を変えて使う端末では、代表的な複数の席で動作を確認しましょう。一か所でうまくいったことを、すべての席で同じように使える証拠にしないことが大切です。用途の異なる端子は、それぞれに必要な動作を確認します。

業務の合格条件を、利用部署と共有しておく

IT担当者と利用部署とでは、「問題なく使える」の意味が異なることがあります。IT担当者は接続できたことを確認していても、利用者はファイルの保存や会議が途切れずにできる状態を求めているかもしれません。

完成前に代表的な業務を選び、確認方法を決めておきます。対象の端末、操作の内容、実施する時間帯、結果を判断する担当者まで記載しておくと、確認漏れを減らせます。速度などの数値を合格条件にする場合は、測定する区間と方法も合わせて決めてください。

なお、インターネット上の速度測定サービスの結果は、外部回線や測定先の状況にも左右されます。その数値だけでLAN配線の良し悪しを判断せず、配線の試験、社内区間の確認、外部サービスの動作確認を使い分けることが大切です。

 

 

配線を増やし続けないための管理ルール

無断のハブ増設を防ぐ窓口をつくる

席が増えるたびに小型のスイッチングハブを机の下に追加していくと、接続の経路や電源の位置が把握できなくなります。故障したときの影響範囲が分からなくなったり、誤ってケーブルを二重に接続してネットワーク全体の不具合を招いたりするおそれもあります。

増設が必要になったときは、担当窓口へ連絡し、既存の空きポートや予備配線を確認してから対応する流れを決めておきましょう。小型ハブの使用を一律に禁止するのではなく、設置場所、上位の接続先、管理者、用途を記録したうえで扱うのが現実的です。

利用者が困ったときに、誰へ相談すればよいかが分かることも、無断増設の予防になります。日常の問い合わせ先が曖昧なまま禁止事項だけを増やすと、現場で独自の対応が進みやすくなるためです。

管理表は、変更のたびに必要な部分だけ更新する

配線図や管理表は、完成時に整っていても、変更を反映しなければすぐに役立たなくなります。年に一度まとめて更新するより、接続先を変えたときにその箇所だけを更新するほうが、運用を続けやすくなります。

管理表には、最低限次の項目を残しておきましょう。

端子番号接続先(スイッチ・ポート)用 途ネットワークの区分変更日作業者変更の理由
3F-E-03-1SW-3F-01・Port 12固定席(経理)執務用2026/04/01総務・田中席替えに伴う変更
3F-MR1-01SW-3F-02・Port 3会議室1・常設端末会議用2026/04/01情報システム・佐藤会議端末の更新

 

変更の理由を一言添えておくと、後から元に戻すべきかどうかを判断しやすくなります。

管理表は、担当者個人のパソコンではなく、権限のある後任者も確認できる場所に保管します。ただし、誰でも閲覧できる資料に管理用のパスワードを直接書き込むことは避け、認証情報は会社のルールに従って別に管理してください。

使わなくなった配線は、停止と撤去を分けて判断する

機器を撤去したときは、そのLAN口を有効なまま残すか、スイッチとの接続を外すかを決めます。将来使う予定がある配線であれば、番号と用途変更の記録を残したうえで維持する方法があります。

一方で、不要になった机上のコードや管理者の分からないハブは、残しておくほど混乱の原因になります。使われていないことを確認し、接続先を記録したうえで整理しましょう。

天井内や床下の配線を撤去する場合は、使用中の配線と取り違えないよう、両端と経路を確認します。見た目で使っていなさそうだという理由だけで切断しないことが大切です。撤去の範囲と時期は、建物の管理規則や次の工事の計画とも合わせて決めてください。

 

総務・IT・利用部署で、設計の条件をそろえる

図面の版と、変更を受け付ける窓口を決める

オフィスの計画では、家具、内装、電源、ネットワークの検討が別々に進むことがよくあります。机の配置が変わったのに配線図へ反映されていなければ、完成後にLAN口の位置が合わないという問題が起きます。

図面には更新日と版を付け、どの版を前提に施工するのかを関係者の間でそろえましょう。口頭で受けた変更も、承認された図面や変更一覧に反映させます。家具の発注後や配線の施工後に変更する場合は、作業範囲と日程への影響を確認してから決定します。

役割分担の例は次のとおりです。

担 当主に判断すること
総務担当者座席レイアウト、家具、工事日程、社内への案内
IT担当者接続の条件、ネットワークの区分、機器の設定
利用部署業務上の使い方、止められない業務、確認の担当者

 

全員がすべての技術的な項目を判断する必要はありません。ただし、変更の連絡先と最終的な判断者は明確にしておきます。

部署から「使えないと困る操作」を集める

配線の要件を聞くとき、「高速な通信が必要ですか」と尋ねるだけでは、具体的な条件はなかなか集まりません。日々の操作に沿って質問すると、必要な情報を引き出しやすくなります。

質問の例聞き出したいこと
出社して最初に何を開きますか業務の起点になるシステムやサービス
保存に時間がかかるデータは何ですか大容量データの種類と保存先
通信が止まると、どの仕事が進まなくなりますか優先して守るべき業務
工事をしてほしくない曜日や時間帯はありますか締め処理や繁忙期の時間帯
席を移動して使う機器はありますかフリーアドレスでの接続条件

 

経理なら締め処理の時間帯、営業なら顧客とのオンライン会議、制作部門なら共有データの保存というように、部署ごとに優先したい業務が見えてきます。すべての部署が同じ速さを求めているとは限らず、多少待つことより切断しないことを重視する業務もあります。

集めた内容は、通常時にできればよい操作と、切り替え直後に必ず確認すべき操作に分けて整理します。部署ごとに確認担当者を決め、テストに使う端末とデータも準備しておくと、完成時の評価を具体的に行えます。

工事費とは別に、社内の対応時間も見込んでおく

LAN配線の更新では、外部に発注する作業のほかに、社内での準備にも時間がかかります。机上の片付け、端末の移動、設定の確認、関係部署への案内、完成後の問い合わせ対応などです。

誰が何を担当するのかが決まっていないと、工事が予定どおり終わっても、社員が業務に戻るまでに時間がかかってしまいます。利用者が行う操作とIT担当者が行う操作を分け、それぞれの実施時間帯を共有しておきましょう。

工事の翌日に問い合わせを受ける担当者も確保しておきます。各席へ接続の手順を案内し、不具合があれば「端子番号」「使っている端末」「発生した時刻」「できなかった操作」を知らせてもらうようにすると、情報を効率よく集められます。

改善の前後を同じ条件で比べる

更新の効果を確かめたい場合は、作業前の状態も記録しておきます。「以前より速くなった気がする」という感覚だけでは、どの区間が改善したのか、別の問題が残っていないのかを判断できないためです。

たとえば、同じ端末から同じ保存先へ同じファイルを送る、同じ会議室で代表的な会議の操作を行うなど、比較の条件をそろえます。測定した時刻や周囲の利用状況が異なる場合は、その違いも記録しておきましょう。

結果が想定に届かなかったときは、配線だけの問題と決めつけず、端末の処理能力、保存装置の負荷、外部サービスの状態まで確認します。作業前の記録があれば、工事による変化と、以前から続いていた症状を分けて調べやすくなります。

保守会社に渡す情報と、社内で判断する範囲を決める

外部の会社に保守を依頼する場合でも、社内の窓口は必要です。問い合わせのたびに異なる社員が別々に説明すると、症状や作業の履歴がばらばらになってしまいます。連絡を集約する担当者と、その担当者が不在のときの代行者を決めておきましょう。

保守会社には、管理対象の機器、配線の接続表、最近の変更内容、業務上の優先順位を共有します。ただし、個人情報や機密情報を含む画面、設定情報などを渡す場合は、会社が認めた方法と範囲で扱ってください。

また、ケーブルの差し替えや機器の再起動を、利用者が自分で行ってよいかどうかも決めておきます。共用機器を止める操作は他の部署にも影響するため、事前の連絡や承認が必要な場合があります。現場で行ってよい確認を整理し、判断に迷う操作は担当窓口へ引き継ぐ手順にすると、対応のばらつきを減らせます。

問い合わせを受けた担当者は、該当する端子番号と症状を記録し、実施した確認を時系列で残します。復旧した場合も、何を変えて直ったのかを共有しておけば、同じ症状が再発したときに前回の対応から調査を始められます。記録は後任者にも確実に引き継ぎましょう。

 

 

オフィスのLAN配線でよくある質問(FAQ)

Q1. オフィスには、一人につき何口のLAN配線が必要ですか?

一人一口のような一律の基準では決められません。パソコンと電話機をどうつなぐか、ドックを使うか、席を固定するかどうかによって必要な数が変わります。まずは席ごとに接続する機器を整理し、複合機やアクセスポイントなどの共用機器と予備口は別に数えてください。社員の人数と必要な接続口の数は、分けて検討するのが基本です。

Q2. フリーアドレスにするなら、有線LANはなくしてもよいですか?

業務と端末の条件に応じて判断する必要があります。Wi-Fiを基本にする席が多くても、常設の会議端末や複合機、アクセスポイントには有線の接続が必要になるのが一般的です。大容量のデータを扱う人や、有線接続が欠かせない業務のために、有線席を一部残しておく方法もあります。

Q3. フリーアドレスの有線席は、何席用意すればよいですか?

有線が必要な業務の人が、最も多く同時に出社する日を基準に考えます。平均の出社人数で決めると、全社会議や研修の日に席が足りなくなるおそれがあります。あわせて、有線席を誰が優先的に使えるのか、予約できるのかといった利用ルールも決めておくと、運用が安定します。

Q4. 有線LANなのに、オンライン会議が途切れるのはなぜですか?

有線で接続していても、外部回線、ルーター、スイッチ、端末、会議サービスなどの状況によって不具合は起こります。特定の席だけで起きるのか、複数の席で同時に起きるのか、社内の通信にも問題があるのかを記録しましょう。配線の交換を先に決めるのではなく、発生条件をもとに原因の区間を調べることが大切です。

Q5. LAN配線は、すべてCat6Aに更新したほうがよいですか?

一律に更新する必要があるとは限りません。目標とする通信性能、配線の距離、既設配線の状態、機器側の対応状況、将来の変更予定をもとに判断します。天井内など後から更新しにくい区間を優先して上位のカテゴリにする方法もありますが、ケーブルを上位規格に替えるだけで業務の速度が上がるとは限りません。

Q6. 会議室には、何口のLAN口が必要ですか?

常設の会議端末を何台つなぐか、参加者のパソコンに有線接続を提供するかによって変わります。常設機器用と持ち込み端末用の口を分けて用意すると、利用者が常設機器のケーブルを抜いてしまう事態を防げます。机のレイアウトを変える会議室や、可動間仕切りで分割する会議室では、変更後の配置でも使える位置になっているかを確認してください。

Q7. 席替えのたびに、LAN配線工事が必要になりますか?

既設のLAN口と新しい机の位置が合っていて、スイッチの空きポートにも余裕があれば、机上のコードや接続先の変更だけで対応できる場合があります。ケーブルが通路を横切る場合や、必要な場所まで届かない場合は、新たな配線を検討します。変更の前に平面図と端子番号を確認すると、工事が必要かどうかを判断しやすくなります。

Q8. スイッチを2台に分ければ、片方が故障しても業務を続けられますか?

台数を分けるだけでは、業務の継続は保証できません。2台が同じ電源や上位の機器に依存していたり、重要な端末が片方に集中していたりすれば、停止の影響は残ります。どのような故障に備えたいのか、どの業務を優先して残したいのかを決め、その条件に合わせて構成を検討してください。

Q9. 休日に工事をすれば、翌朝の始業時には必ず使えますか?

休日に施工しただけでは、始業時に使えることは保証できません。配線のほかにも、機器の設定変更、認証、電話、複合機、業務システムの確認が必要になるためです。確認の担当者と完了の条件を決め、問題が起きた場合に元の構成へ戻す時間も確保したうえで計画しましょう。

Q10. 工事会社に相談するとき、何を準備すればよいですか?

机と共用機器の配置図、固定席とフリーアドレスの使い分け、オンライン会議や大容量データを扱う業務、予定している増員や席替えをまとめておきましょう。あわせて、止められない業務と作業できる時間帯を伝えると、配線の構成だけでなく、業務を止めない切り替え方法まで一緒に検討してもらいやすくなります。

 

まとめ|働き方が変わっても管理し続けられるLAN配線を目指す

オフィスのLAN配線では、必要な場所へケーブルを通すことと、日々の業務で使い続けられることを一緒に考える必要があります。最後に、この記事の要点を整理します。

テーマ押さえておきたいポイント
設計の出発点人数ではなく、業務と使い方からエリアごとの条件を決める
固定席机や椅子の動き、機器の組み合わせ、場所で付ける端子番号
フリーアドレス出社のピークで有線席を決め、接続方法と認証をそろえる
会議室常設機器と持ち込み端末を分け、同時利用の時間帯で確認する
通信性能ケーブル単体ではなく、端末から利用先までの経路で判断する
将来への備え接続口・ポート・給電・設置空間・経路の5つで予備を考える
切り替え施工と切り替えを分け、判断の期限と戻す時間を確保する
完成後配線・接続・業務の三段階で確認し、管理表を更新し続ける

 

席替えや移転では、切り替えの順序、業務ごとの確認方法、問題が起きたときの復旧手順まで決めておくことが大切です。完成後も端子番号と接続先の記録を更新し続ければ、担当者が替わっても管理できる状態を保てます。

工事の一般的な流れや費用の内訳は、<LAN配線工事の進め方・見積もりの見方>で確認できます。依頼先の対応範囲や相談の仕方を整理したい場合は、<LANケーブル配線を頼む業者の選び方>を参考にしてください。

まずは、現在の配置図に「接続している機器」と「今後変わる予定の場所」を書き込むことから始めてみましょう。それだけでも、配線計画で検討すべきことがはっきりと見えてきます。

 


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