将来を見据えた電気設備のリフォームとは?高齢化・災害対策にも対応するには
これからの暮らしは「備える電気設備」が当たり前に
日本では今後ますます高齢化の進行が予測されると同時に、地震・台風・豪雨などの自然災害のリスクも年々高まっています。そのため、これからの住宅には「今だけ快適」ではなく、“10年後・20年後も安心できる暮らし”を見据えた電気設備の整備が必要不可欠です。
特にリフォームという機会は、将来を見据えた電気設備を整える絶好のタイミングです。
以下では、「高齢化への対応」「災害への備え」の2つの視点から、将来に向けてどのような電気リフォームをすべきかを詳しくご紹介します。
高齢化に備える電気設備リフォームとは?
1. 人感センサー付き照明で転倒リスクを低減
【課題】
高齢者は夜間の移動時に暗がりで足元を取られ、転倒事故が発生するリスクが高いです。
【対策】
・ トイレ、廊下、寝室などに人感センサー付きLED照明を導入する
・ 明るさや点灯時間を自動調整できる機能付きで、安全性と省エネを両立
【ポイント】
・ スイッチを探す必要がなく、身体の負担を軽減
・ 子どもや来客にとっても便利な仕様
2. 視認性・操作性に配慮したスイッチとコンセントの配置
【課題】
高齢になると、背がかがんだり立ち上がったりする動作が困難になります。
【対策】
・ スイッチを床から1,000mm前後の高さに配置
・ コンセントは無理のない位置(600~700mm)に設置
・ ワイドスイッチやイルミネーションスイッチで押しやすく見やすくする
【ポイント】
・ 身体能力の低下に対応した設計で、いつまでも自立した生活が可能に
3. 緊急呼び出し・見守りシステムの設置
【課題】
万が一の体調不良や転倒など、緊急時に助けを呼べないことが命に関わるケースがあります。
【対策】
・ 緊急ボタン(ワイヤレス式/壁付け式)をトイレ・浴室・寝室に設置
・ 見守りセンサーや人感センサー+通信機能連動で、異常を自動通知
【ポイント】
・ 離れて暮らす家族への通知機能付きなら、在宅介護・独居高齢者にも安心
災害に強い電気設備を整えるには?
1. 非常用電源(蓄電池)の導入で停電時も安心
【課題】
地震・台風・豪雨による停電が増加しており、復旧まで数日を要するケースも珍しくありません。
【対策】
・ 家庭用蓄電池を設置し、停電時にも最低限の電力供給を確保
・ 太陽光発電との連携で、昼は発電、夜は蓄電でエネルギーを自給自足
【ポイント】
・ 冷蔵庫、照明、スマホ充電など、命を守る最小限の機器を稼働させることが可能
・ 停電対応の専用コンセントの設置も併せて検討
2. 分電盤の非常用回路対応
【課題】
停電時には家全体が一斉にダウンするため、必要な機器まで止まってしまうという問題があります。
【対策】
・ 非常用回路を分電盤内に設け、選択した回路だけを非常電源に切り替え
・ 専用のスマート分電盤で、自動的に電源を切替える機能を搭載可能
【ポイント】
・ 停電しても「冷蔵庫・通信機器・照明」は通常どおり使えるという、災害時の安心感が段違い
3. 通信環境の確保(有線LAN・PoE対応)
【課題】
災害時には通信が生命線。スマホやネットが使えないと情報から取り残される恐れがあります。
【対策】
・ PoE(Power over Ethernet)対応機器で、1本のLANケーブルから通信と電源を供給
・ ネットワークカメラやセンサーのバックアップ電源との連携も検討
【ポイント】
・ 災害時でも通信設備が維持され、避難情報や家族との連絡が確保できる
将来に備えた「拡張性ある配線設計」が重要
高齢化や災害対策は、今すぐすべてを導入しなくても、「将来に備えて配線だけは準備しておく」という選択が非常に有効です。
【推奨される将来対応の配線例】
導入予定 | 今できる準備 |
---|
スマート家電 | 通信用LAN・無線環境・IoT対応分電盤を導入 |
EV(電気自動車) | 屋外・駐車場への200V電源配管、専用ブレーカーの確保 |
蓄電池・太陽光 | 分電盤の増設スペースと非常用回路をあらかじめ設計に含む |
見守りセンサー | 天井裏・壁内に予備配線やダクトを通しておく |
「今すぐ使わないけれど、5年後、10年後には必要になるかもしれない」——そのときに再び壁や床を壊して配線するのではなく、今このタイミングで備えておくことが、将来の工事費削減にもつながります。
10年後、20年後も快適に暮らすための“備えるリフォーム”を
高齢化・災害・ライフスタイルの変化といった未来の不安に対して、「今からできること」を具体的に施しておくことが、これからの住宅リフォームの新しい常識です。
電気設備はその中心にあり、いざというときの安心感や、年齢を重ねたときの使いやすさ、さらには地球環境への配慮まで反映できる分野でもあります。
リフォームをきっかけに、ぜひ将来を見据えた電気設備の見直し・導入をご検討ください。それは「今を快適に過ごす」だけでなく、「未来を安心して暮らせる家」をつくるための第一歩です。

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リフォームと一緒に考えるLAN配線のメリットと設計ガイド
まとめ
電気設備の見直しは、住まいの“質”と“未来”を守るための最重要ポイント
住宅のリフォームを考えるとき、どうしても目に見える部分=壁紙・床・水回りなどの「美観」や「設備の快適性」に意識が向きがちです。しかし、本当に見直すべきなのは、住まいの“内部”にある電気設備です。
電気は私たちの暮らしを支える“命綱”ともいえるインフラであり、電気設備の老朽化・容量不足・設計不備が住まい全体の安全性・機能性に直結しています。特にリフォームというタイミングは、電気設備の「隠れた課題」を表に出して、根本から見直せる貴重な機会です。
この機会を活かすことで、単なる“見た目の刷新”ではなく、“住まいの中身からの再構築”が実現します。
電気設備リフォームで得られる7つの効果
電気設備の見直しを行うことで、次のような多面的な効果が得られます。
【電気リフォームの主な効果】
分類 | 効果例 |
---|
安全性 | 火災・感電リスクの低減、漏電遮断の強化、過負荷対策 |
快適性 | コンセントの増設・位置変更、照明の明るさ改善、スマート機器との連携 |
省エネ性 | LED照明・スマート分電盤・オール電化による電力の効率的使用 |
災害対策 | 蓄電池・非常用回路による停電時のバックアップ、通信設備の冗長化 |
高齢化対応 | 人感センサー・緊急呼び出し・バリアフリー配線などによる安心な住環境 |
将来性 | EV充電・IoT連携・太陽光発電といった次世代設備の導入対応 |
資産価値向上 | 機能性の高い住宅は中古市場でも評価が高く、将来的な売却時にも有利に働く |
こうした効果を得るためには、単に“古くなったから交換する”という発想ではなく、“未来に備える視点”をもって計画することが大切です。
リフォームを成功させるための3つのポイント
リフォームにおける電気設備の成功は、次の3つのポイントに集約されます。
1. 計画段階での電気設計の組み込み
リフォームの設計初期から、生活導線・使用機器・部屋ごとの用途に応じた電気プランを練ることが、満足度の高い仕上がりにつながります。照明・スイッチ・コンセントの配置だけでなく、今後のIoT機器やEVへの対応余地まで考慮しておくことが重要です。
2. 信頼できる電気工事業者との連携
施工の品質は「誰がやるか」で大きく変わります。
国家資格(第1種・第2種電気工事士)を持ち、住宅リフォームの実績が豊富な専門業者に依頼することで、安全かつ効率的な工事が可能になります。
丁寧な現地調査と分かりやすい見積説明をしてくれる業者は、信頼に値する証拠です。
3. 専有/共有・法令・規約などの遵守
マンションの場合はとくに、専有部・共有部の区別や管理組合のルール、電力会社との手続きにも注意が必要です。無許可の工事はトラブルのもとになりますので、法令順守・事前相談・申請の準備を怠らないことが成功のカギです。
リフォームは「今」だけでなく「これから」の暮らしを整えるためのもの
これからの住まいづくりは、「今だけ満足」では不十分です。
将来の家族構成の変化、加齢、災害、技術進化など、あらゆる可能性を見越した“電気設備の備え”が住まいの価値を左右する時代です。
例えば、
・ 5年後にEV車を購入するかもしれない
・ 10年後に在宅介護が必要になるかもしれない
・ 15年後には電力コストがさらに高騰しているかもしれない
——そうした未来のシナリオに対応できる住まいこそ、本当に賢いリフォームであると言えるのではないでしょうか。
最後に:電気リフォームは“未来の安心”をつくる投資
表面的な美しさだけでなく、安心・安全・快適を根底から支えるのが電気設備です。その見直しは、「見えない部分に手を入れること」ですが、暮らしの質を大きく底上げする本質的なリフォームです。
今このタイミングで、未来に備える電気設備リフォームを、ぜひ一歩踏み出してみてください。
それは、単なる工事ではなく、「安心と快適を手に入れるためのライフデザイン」そのものです。
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