高所作業の常識を覆す!ドローンによる電気設備点検のメリットと課題とは?
高所作業は“登る”から“飛ばす”時代へ
これまで、電柱・鉄塔・送電線などの点検作業は、作業員が命綱をつけて高所へ登る「危険と隣り合わせの作業」でした。
特に都市部や山間部では、周囲の障害物や足場の不安定さ、気象条件によって作業が大きく制限されるケースも多く、時間や人員の確保が大きな課題でした。
しかしドローンの登場により、この“登る点検”は“飛ばす点検”へと転換しつつあります。たとえば、赤外線カメラを搭載したドローンであれば、設備表面の微細な温度異常を非接触で検出でき、人が直接確認しにくい箇所も安全・確実に把握可能です。
また、ズーム機能付きの高解像度カメラで、碍子のひび割れや鉄部の腐食といった微細な劣化まで拡大表示でき、データとして保存・共有することで、複数の技術者が後日でも確認できる体制が構築できます。
これにより、従来では考えられなかったスピードと精度で、高所点検が実現されているのです。
ドローン点検の主なメリットとは?
【ドローン点検の5つの主なメリット】
・ 作業員が高所へ登らなくて済むため、転落や感電などの事故リスクが激減する
・ 一人で複数の設備点検が可能になり、人件費や時間の削減に大きく寄与
・ 点検データを写真や映像で記録でき、報告書の精度や客観性が向上
・ 設備の異常を早期発見しやすくなり、予防保全がしやすくなる
・ 災害時の状況確認にも迅速に対応でき、復旧判断が早まる
特に、点検後の記録写真や動画は、関係部署との共有・説明・証拠資料としても活用できるため、業務の透明性と信頼性を飛躍的に高める効果があります。
一方で、導入には課題もある
ただし、ドローンの導入が万能であるというわけではありません。現時点では、以下のような課題や制約も存在しています。
1. 飛行条件に天候や地形の影響を受けやすい
ドローンは風速や降雨に非常に敏感です。
風速が5m/s以上での飛行は原則禁止とされています。特に送電線や鉄塔周辺では強風が吹きやすく、飛行スケジュールが天候に大きく左右されることがあります。
また、山間部や都市部ではGPS信号が遮られたり、電波干渉により操作が不安定になるケースも見られます。
2. 資格取得や法令遵守が必要
ドローンを業務で活用するには、航空法に基づく飛行申請や、無人航空機操縦士の国家資格が必要になる場合があります。
特に、人口集中地区(DID)や夜間・目視外飛行を行う際には、事前の申請と許可が義務付けられており、飛行マニュアルや安全管理体制の整備も求められます。
3. 機材の導入コストが高い
高性能な産業用ドローンの価格帯は、100万円〜200万円超にもなるため、中小企業にとっては初期投資が大きな負担になることがあります。
また、保守費用・バッテリー管理・操縦訓練など、導入後のランニングコストや教育体制の確保も無視できません。
それでも導入が進む理由
これらの課題を抱えながらも、電気工事業界でドローンの導入が進んでいるのは、その効果が圧倒的に大きいからです。
たとえば、ある電力会社では、従来約5日かかっていた山岳地帯の鉄塔点検を、ドローン導入後は2日で完了できるようになり、作業員の負担と安全リスクが激減したという実例もあります。
また、AIやクラウドと連携することで、撮影データから異常を自動判定する仕組みも急速に実用化されており、技術の進歩が導入障壁を次第に下げつつあるのです。
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電柱や送電線の点検にドローンを活用!安全性・効率性が劇的に向上
かつては「危険で非効率」が当たり前だった高所点検
電柱や送電線、そして鉄塔の点検作業は、電気工事の中でも特に危険度と労力の高い業務の一つでした。作業員は高所作業車やクライミング用の装備を用いて設備に登り、肉眼での目視確認と手作業による記録を繰り返すことで、点検の精度を維持していたのです。
こうした現場では、わずかな気の緩みが命に関わるリスクを生むため、長時間の作業でも集中力と緊張感を保ち続ける必要がありました。
加えて、広範囲の送電線ルートを移動しながら点検を進める場合、山間部や人が立ち入れない地域では物理的なアクセスそのものが困難であり、調査漏れや遅延も多発していたのです。
ドローンがもたらした点検手法の劇的な進化
こうした点検作業に革命をもたらしたのが、高性能ドローンの導入です。
現在では、4Kカメラや赤外線センサー、ズームレンズを搭載した産業用ドローンが活用され、地上から操作するだけで、送電設備の状態を上空からくまなく確認することが可能となっています。
特に、以下のような点で安全性と効率性は劇的に向上しています。
【従来の点検とドローン点検の比較】
項目 | 従来の点検手法 | ドローン活用点検 |
---|
安全性 | 高所作業で感電・落下リスクあり | 地上操作で非接触・非侵入型の点検可能 |
点検に要する時間 | 1地点あたり60~90分程度 | 1地点あたり15~30分で完了 |
作業人数 | 3~4人(運転手・監視・作業者) | 1~2人(操縦者・補助員) |
点検精度 | 肉眼で確認、記録は手書き | 画像・動画・赤外線で高精度に記録 |
移動コスト・負担 | 高所作業車や登坂あり | 地上から複数拠点を連続点検可能 |
このように、ドローンを用いた点検は、時間・コスト・安全性・記録性すべての面で優れていると言えます。
電力会社・通信会社の現場でも続々と導入が進む
現在、全国の電力会社や通信事業者では、ドローンによる設備点検の本格運用が進行中です。
たとえば、東京電力ホールディングスでは、送電線や鉄塔にドローン点検を導入し、点検作業の大幅な効率化とコスト低減を実現したと報告されています。また、関西電力や中部電力においても、AIによる画像解析と連携した点検手法が採用されており、目視よりも高精度な異常検出が可能となっています。
【導入による効果の具体例】
・ 鉄塔頂部の碍子の微細なクラックを発見
・ 電柱支線のたるみを遠隔で確認し、早期張り直しを実施
・ 鳥の巣による送電障害の兆候を事前に把握し、トラブルを未然に防止
これらは、従来であれば“問題が発生してから対応する”後追い型の保守から、“問題が起きる前に防ぐ”予防保全型の点検スタイルへと進化した成果でもあります。
今後のスタンダードになる「無人化点検」とは?
将来的には、点検のさらなる効率化・無人化を目指し、以下のような技術との連携が拡大する見込みです。
【無人化点検の将来像】
・ AIによる画像認識と異常判定(ひび割れ、サビ、異物の自動判定)
・ 自律飛行によるルート巡視の自動化
・ クラウド連携による遠隔地の一元管理
・ 夜間点検や悪天候でも飛行可能な機体の開発
このような流れの中で、電柱・送電線の点検業務そのものが、技術者の“監視・分析”業務へと変わり始めているのです。
ドローン点検は「現場力」から「分析力」へ
従来、点検作業においては現場での経験や“勘”が大きな判断材料となっていました。
しかしドローンによる高精度データの取得が進んだことで、今後はその記録をもとに社内外の複数人で分析・評価し、施工計画や予防措置を判断するというスタイルが主流になっていきます。
つまり、現場のプロが空から集まった“デジタルデータ”を武器に、より戦略的な業務へシフトしていく時代が到来しているのです。
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電気工事にドローンを使う時代へ!各機関の取り組みとは?
官民連携で進むドローンの社会実装
電気工事業界におけるドローンの活用は、単なる企業の独自施策ではなく、国・自治体・民間企業が連携して推進する「国策レベルの取り組み」へと発展しています。
特に、国土交通省・経済産業省・総務省などの関係機関は、ドローンを含む建設・インフラ領域のデジタル化に大きな期待を寄せており、実証実験やガイドライン整備を積極的に進めています。
以下では、主要な官公庁や関連団体の取り組みを具体的にご紹介します。
国土交通省|建設現場の“スマート化”を強力に推進
国土交通省は、「i-Construction(アイ・コンストラクション)」政策の中核技術のひとつとして、ドローンの導入を強力に後押ししています。
これは、建設工事における調査・設計・施工・維持管理のすべてのプロセスにおいて、ICT技術を活用し、生産性向上と人材不足対策を同時に進める国家戦略的な取り組みです。
特に以下のような支援策が進められています。
・ 公共工事でのドローン活用を評価対象に含める発注方式(総合評価落札方式)
・ UAV測量の基準化やマニュアルの作成
・ 災害時におけるドローンの迅速活用を想定した対応指針の整備
これにより、電気工事関連の土木インフラ工事(例:地下電線管の埋設、地上設備の配置確認)でもドローンの使用が当たり前になりつつあります。
経済産業省|インフラ保守のスマート化に注力
経済産業省では、老朽化する送電インフラ・電力設備の点検と管理に関して、ドローンの活用を「スマート保守管理」の柱として位置付けています。
具体的には、以下のような支援が進行中です。
・ ドローン+AI画像解析による異常検知システムの実証事業
・ 送電鉄塔や変電所の自動巡回システムの導入支援
・ ドローン操作オペレーターの育成プログラムに対する補助金制度
これにより、送電線の巡視業務が自動化され、保守コストの削減・労災リスクの低減が現実化しつつあります。
地方自治体|災害対応・保守点検への先進活用
国だけでなく、地方自治体でもドローン活用の取り組みが加速しています。
たとえば、
・ 北海道庁は、冬季における雪害による被害の点検にドローンを導入。
・ 静岡市では、送電設備を含む防災インフラの定期監視にドローンを導入。
これらの自治体では、ドローンを単なる映像記録機器として使うのではなく、リアルタイム通信や3D地形データとの連動によって「災害対応+電力維持」の基盤技術として位置づけているのが特徴です。
電力・通信事業者|民間主導で実用化フェーズへ突入
電気工事の中心的担い手である電力会社・通信インフラ事業者でも、すでに実務レベルでのドローン活用が進んでいます。
【代表的な取り組み事例】
・ 東京電力HD:送電線点検におけるドローンの活用。
・ 関西電力:ドローンによる鉄塔の点検で、経年劣化箇所を事前特定。
・ NTT西日本:橋梁管路および鉄塔の点検業務効率化にドローンを活用。
これらの事例が示す通り、「電気設備の点検はドローンで行う」というスタイルは、もはや試験導入の段階を超え、実務として確立されつつあります。
ドローン導入を支える公的支援制度・補助金制度
また、ドローンの導入においては、費用・人材育成・運用体制といった障壁を乗り越えるための公的支援制度も整備されています。
【代表的な支援メニュー】
・ 中小企業向けIT導入補助金
・ 地方自治体のICT設備導入補助制度
・ ドローンスクールの受講料助成や資格取得支援
これらを活用することで、中小の電気工事業者でもドローン導入のハードルを下げることが可能です。
電気工事の“空からの時代”は、すでに始まっている
以上のように、国・自治体・企業が一体となって進めるドローン活用の取り組みは、電気工事という業界の常識を根本から変えようとしています。
高所作業や巡視点検といった危険と労力を伴う業務が、非接触・省人化・高精度化という全く新しいワークフローに生まれ変わりつつあるのです。
そして今後、法整備や技術基準、操縦免許制度の進展によって、ドローンの運用はますます当たり前のものとなり、現場の“空”が電気工事士の新たなフィールドへと広がっていくことでしょう。

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