安定しない有線LANを改善する方法とは?
一時しのぎではなく“根本解決”を目指すべき理由
有線LANの不安定さに悩まされている場合、一時的な再起動やケーブルの抜き差しだけでは根本的な解決にはなりません。
たとえ改善したように見えても、再び同じようなトラブルが発生する可能性が高いからです。したがって、問題の原因を正確に突き止め、それに対する最適な対策を講じることが極めて重要です。
ここでは、実際に多くの現場で効果が認められている具体的な改善方法を、項目ごとに詳しく紹介します。
改善策 1:LANケーブルをカテゴリ6A以上に交換する
最も手軽でありながら効果的なのが、LANケーブルの交換です。
現在もCat5eやCat6ケーブルを使用している場合、Cat6A以上のシールド付きケーブルに交換するだけで、ノイズ干渉を大幅に軽減できる可能性があります。
【LANケーブル性能比較表】
カテゴリ | 最大通信速度 | 周波数帯域 | 特徴 |
---|---|---|---|
Cat5e | 1Gbps | 100MHz | 古い環境向け、ノイズに弱い |
Cat6 | 1Gbps | 250MHz | 標準的な社内LAN構成向け |
Cat6A | 10Gbps | 500MHz | 高速通信・ノイズ対策◎ |
Cat7 | 10Gbps | 600MHz | 業務用・STP推奨環境 |
ケーブルの劣化や内部断線は見た目では判断できないため、導入後5年以上経っている場合は、まず疑ってみるべきです。
改善策 2:配線ルートと敷設方法を見直す
LANケーブルの品質が良くても、敷設経路に問題があると通信が不安定になることがあります。
特に以下のような配線環境は要注意です。
・ 電源ケーブルと並走している(ノイズ干渉)
・ 蛍光灯、モーター、電子レンジの近くを通っている
・ ケーブルが途中で何度も折れ曲がっている(伝送ロス)
・ ケーブル長が100mを超えている(信号減衰)
このような場合は、配線経路を再設計し、ノイズ源からできるだけ距離をとるよう施工をやり直す必要があります。また、ケーブルクランプや配線ダクトを活用して物理的に安定した状態を維持することも重要です。
改善策 3:ルーター・ハブを最新モデルに更新する
通信機器の老朽化も、有線LANの不安定さに直結する大きな要因です。
古いルーターやスイッチングハブは、通信処理能力やポート性能に限界があり、多数の端末が同時にアクセスするとデータ処理が追いつかなくなります。
特に、以下のような機器は交換を検討すべきです。
・ 購入から5年以上経過している
・ ギガビット(1000BASE-T)に対応していない
・ 管理機能(VLAN、QoS)がない非管理型スイッチ
また、PoE(Power over Ethernet)対応スイッチに更新することで、今後のIPカメラやIoT機器導入にも柔軟に対応できます。
改善策 4:ネットワーク設定の最適化とファームウェア更新
有線LANの安定性は、物理的な配線だけでなく、論理的な設定の整備によっても向上します。
以下の項目を確認・調整することで、通信の安定性が劇的に改善されるケースが多々あります。
【設定確認ポイント】
・ デュプレックスモードの固定設定(Full Duplex推奨)
・ IPアドレスの競合防止(静的IP設定またはDHCP管理)
・ ルーターやスイッチのファームウェアを最新版に更新
・ トラフィック分散のためのVLAN設定
・ 不正アクセス対策のセキュリティポリシー設定
特に、「なんとなく初期設定のまま使っている」場合は、通信品質に悪影響を及ぼしている可能性が高いため、早急に見直す必要があります。
改善策 5:スイッチングハブの階層構成を導入する
中小規模以上のオフィスでは、ネットワーク機器の階層化が重要です。
すべての端末を1台のハブに接続する構成では、トラフィックが集中し、帯域の取り合いが発生してしまいます。
これを防ぐためには、以下のような階層構成の導入が効果的です。
【階層型ネットワーク構成の例】
・ コア層
・ ディストリビューション層
・ アクセス層
このように構成することで、ネットワーク負荷が分散され、安定した通信環境が実現できます。
改善策 6:プロによる現地調査と再配線工事を依頼する
上記の改善策を試してもなお通信不安定が続く場合、社内対応では限界があると判断し、専門業者に診断を依頼すべき段階です。
専門業者であれば、以下のようなプロフェッショナルな対応が可能です。
・ LANテスターによるケーブル品質チェック
・ 通信トラフィックの可視化や解析(スループット、パケットロス)
・ 構内LANの経路設計と再施工
・ セキュリティを考慮した再構成提案
・ 導入後の保守や点検契約による継続サポート
自社内で試行錯誤する時間を短縮し、トラブルの再発防止につなげる意味でも、プロの介入は大きなメリットとなります。
有線LANの改善は“未来への投資”
有線LANの不安定さは、単に「つながらない」「遅い」という不便にとどまらず、業務効率や信頼性、顧客対応力にまで悪影響を与える重大なリスクです。だからこそ、表面的な対症療法ではなく、構造的な見直しとプロの力を借りた改善が不可欠となるのです。
次の章では、さらに安定した通信環境をつくるための設計の考え方と、トラブルを未然に防ぐためのポイントを詳しく解説していきます。
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