旧来型のやり方でも電気工事自体は対応できるの?
限界を迎えつつある旧来型のやり方
電気工事の基本的な技術や方法は長い歴史の中で培われてきました。そのため、旧来型の技術ややり方には確固たる信頼性があります。たとえば、住宅や商業施設の配線工事、電力供給設備の設置など、基本的な業務において旧来型の方法は今でも多くの現場で使用されています。
しかし、現代のニーズに完全に対応するには限界があることも事実です。特に、以下のような新しい分野では、旧来型のやり方だけでは対応が難しい場面が増えています。
【 新しいニーズに対応できない例 】
・ IoT機器の設置と設定
従来のアナログ配線工事では、インターネット接続が必要なデバイスやスマート家電に対応することができません。
・ 再生可能エネルギー設備
太陽光発電や蓄電池システムなど、従来の電力設備とは異なる機器の接続には新しい技術が求められます。
・ 電気自動車充電設備
高速充電を実現するための特殊な機器の設置は、旧来型の知識だけでは不十分です。
旧来型技術の価値と役割
とはいえ、旧来型のやり方が全く価値を失うわけではありません。多くの現場では、基本的な配線技術や電力設備の設置・修理が依然として重要です。以下のような場面では、旧来型のやり方が活用されています。
【 旧来型技術が活きる場面 】
1. 災害時の復旧作業
地震や台風などの災害後、倒壊した電柱や配線の復旧作業は基本的な技術が求められます。
2. 老朽化した設備のメンテナンス
古い建物や施設では、旧来型の配線や配電盤が多く使用されているため、それらの知識が必要です。
3. 小規模な住宅工事
一般家庭での電気修理や簡易的な配線工事では、従来型の技術で十分対応可能です。
旧来型技術と新しい技術の融合
現代の電気工事士に求められるのは、旧来型の技術を基盤に、新しい技術を学び柔軟に対応する能力です。たとえば、以下のような方法で両者を組み合わせることが可能です。
【 技術の融合例 】
・ アナログ配線の知識を活かしてIoTデバイスを設置
スマートホーム機器の設置では、従来型の配線技術を土台に、ネットワーク構築のスキルを追加で活用する場面が多くあります。
・ 太陽光発電の接続に基本的な配線技術を応用
太陽光パネルからの電力を家庭用配電盤に接続する作業では、旧来型の技術が基礎となります。
このように、旧来型の技術は完全に時代遅れになるわけではなく、新しい技術との組み合わせによって進化し続けるのです。
ここ何年かの産業構造の変化で電気工事の立ち位置ってどうなったの?
電気工事業界は、ここ数年で急速に変化している産業構造の影響を強く受けています。脱炭素化やデジタル化が進む中で、電気工事の立ち位置はこれまで以上に重要性を増していますが、従来の枠組みだけでは対応しきれない状況も生まれています。
以下では、産業構造の変化が電気工事業界に与えた影響と、その中での電気工事士の役割の変化について具体的に見ていきます。
1. 脱炭素化が進む中での変化
地球温暖化対策としての脱炭素化の取り組みは、多くの業界に影響を与えています。電気工事業界にとってもこれは無視できない大きな変化です。
再生可能エネルギーの普及
・ 太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が増えています。
・ 電気工事士は、これらの設備を設置するだけでなく、効率的なエネルギーマネジメントシステム(EMS)の構築にも関与する必要があります。
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)や省エネ住宅の需要増加
・ 建築物の省エネルギー性能を高めるため、電気工事士が省エネ機器やシステムの設置を行う場面が増えています。
・ 具体例として、LED照明の導入やエネルギー消費を最適化するための制御システムの設置が挙げられます。
電気工事士の役割の進化
これまでの配線や修理といった基本業務だけでなく、再生可能エネルギーの最適な運用を支える設計・施工スキルが求められています。
2. デジタル化とテクノロジーの進化による変化
スマート化が進む建築物
産業構造のデジタル化は、建築物や施設のスマート化を加速させています。
・ スマートホーム:IoT機器が普及し、家電やセキュリティシステムをネットワークで連携させることが一般化しています。
・ スマートビル:エネルギー効率やセキュリティを最適化するための高度な制御システムが求められています。
ICTインフラの整備
・ データセンターの拡大:クラウドコンピューティングやAIの普及に伴い、大規模なデータセンターの需要が増えています。
・ 5G基地局の設置:次世代通信規格である5Gのインフラ整備は、電気工事士が大きく関与する新たな分野です。
電気工事士に必要なスキルの変化
・ 電気工事士は、配線技術だけでなく、ITネットワークや通信技術の基礎知識を持つことが重要です。
・ さらに、スマートグリッドやIoTに対応した設備設置スキルが求められます。
3. EV(電気自動車)の普及がもたらす変化
EVインフラの急速な拡大
電気自動車の普及は、電気工事業界にとって大きな転換点となっています。
・ 充電設備の設置:家庭用充電器から公共の急速充電ステーションまで、多種多様な設備の設置需要が急増。
・ 充電ネットワークの構築:IoT技術を活用した充電ネットワークが普及し、電気工事士がそれを支える重要な役割を担っています。
電力需要の増加への対応
・ 電気自動車の普及に伴い、電力需要が増加しています。
・ 電気工事士は、住宅や施設の配電盤を強化し、適切な電力供給を確保する工事を行う必要があります。
4. 少子高齢化と人手不足の影響
日本をはじめとする多くの国で、少子高齢化による労働力不足が深刻化しています。これは電気工事業界にも大きな影響を与えています。
若手技術者の不足
・ 電気工事士の平均年齢が上昇しており、若手の人材が不足しています。
・ その結果、熟練技術者の負担が増加している状況です。
効率化と自動化の必要性
・ 作業の効率化:ロボットやAIを活用した設備点検や施工支援が進んでいます。
・ 技能の継承:デジタルツールを活用し、若手技術者にノウハウを効率的に伝える仕組みが必要です。
5. 電気工事士の立ち位置の変化:現場作業員から技術者へ
これまで電気工事士は「配線をつなぐ作業員」というイメージが強かったですが、産業構造の変化によってその立ち位置は大きく進化しています。
技術者としての役割
・ 新しい技術やシステムを現場で実現するエンジニアとしての役割が求められています。
・ 設計、施工、そしてメンテナンスを一貫して担当する「総合技術者」への転身が進んでいます。
コンサルタントとしての役割
・ 再生可能エネルギーやスマートビルディングに関するアドバイスを行うコンサルタント的な役割を担うケースも増えています。
・ クライアントに対して最適な技術選定やシステム構築を提案する能力が求められています。
ここ数年の産業構造の変化によって、電気工事士の役割は単なる作業員から技術者やコンサルタントへと進化しています。再生可能エネルギーの普及、デジタル化、EVインフラの拡大といった変化の中で、電気工事士は新しいニーズに応えるために進化を続けています。
これからの電気工事士には、旧来型の技術をベースに、最新技術を学び柔軟に対応する姿勢が求められます。技術革新が進む社会で、その専門性を活かしながら、さらに重要な役割を果たしていくことでしょう。
次の見出し「さまざまなテクノロジーのアップデートに電気工事ってどう対応していったらいいの?」でさらに詳しく解説します。どのような具体的なスキルや知識が必要かをご紹介しますので、引き続きお読みください!