電気工事

2024.07.15

電気工事の範囲はどこまで?資格の有無で変わる対応可能な作業

 

電気工事の範囲ってどこまでなの?

電気工事は、私たちの生活やビジネスの基盤となる電力供給を支える重要な業務です。この作業は、単純な家庭内の電球交換から、大規模な商業施設や工場での高電圧設備の設置まで、非常に広範囲にわたります。電気工事はその内容によって「無資格で行える簡単な作業」と「有資格者しか行えない高度な作業」に分けられ、その範囲は法律で厳密に規定されています。

まず、電気工事の一般的な範囲について見ていきます。

1. 家庭内電気工事

家庭で行われる電気工事は、主に低圧の電気を扱う作業です。例えば、新しい家電製品を設置する際に必要なコンセントの増設、照明器具の設置や交換、スイッチの取り替えなどがこれに該当します。家庭内での電気工事は、安全に電力を利用するために不可欠であり、日常生活における利便性を向上させる役割を果たします。

照明器具の設置・交換

部屋の明るさを確保するために、シーリングライトやペンダントライトなどの照明器具を設置・交換します。この作業は、電源の配線を適切に接続する必要があるため、資格を持つ電気工事士が行うべき作業です。

コンセントの増設

電化製品が増えることで、既存のコンセントだけでは足りなくなる場合があります。新たにコンセントを設置する際には、正しい配線を行い、電力の安定供給を確保することが重要です。

 

家庭内電気工事は、電力供給の基盤を維持し、日常生活を安全で快適なものにするために必要な作業です。適切な知識を持つ技術者が行うことで、電気事故のリスクを低減させることができます。

2. 商業施設やビルでの電気工事

商業施設やビルで行われる電気工事は、家庭内の工事とは異なり、大規模な電力設備を扱うことが特徴です。これには、空調設備やエレベーター、非常用発電機、さらにはネットワークシステムの構築に関連する電気工事が含まれます。

空調設備の配線工事

オフィスビルや商業施設では、快適な温度環境を提供するために空調設備が必須です。この設備のための電気配線工事は、エネルギー効率を最大限に引き出すために適切な配線計画が必要です。

照明システムの設置

商業施設やビルでは、エネルギー効率の高い照明システムを設置することが一般的です。これにはLED照明やセンサーライトの導入が含まれ、これらのシステムは電気工事士が正確に配線する必要があります。

3. 工場や発電所での電気工事

工場や発電所などの産業施設では、高圧電力を扱う電気工事が必要です。これには、機械設備への電力供給、配電盤の設置、発電設備の保守作業が含まれます。高圧電力は非常に危険であり、取り扱いを誤ると重大な事故につながる可能性があるため、電気工事士の中でも特に高い技術力が求められます。

高圧電力設備の設置

工場では、数千ボルトの電圧を扱う高圧設備が必要です。この設備を安全に設置・管理するためには、資格を持つ技術者による厳密な配線と検査が欠かせません。

発電所の配電設備

発電所では、電力を効率的に送電するために大規模な配電設備が整備されています。これらの設備は、定期的なメンテナンスと修理が必要であり、これもまた高度な資格と技術が求められる領域です。

 

このように、電気工事の範囲は非常に広く、日常生活から産業活動まで多岐にわたる作業が含まれています。それぞれの作業は、安全かつ効率的に電力を供給するために不可欠であり、電気工事士の専門的な知識と技術が必要です。

 

無資格でできる電気工事の範囲は?

電気工事は、感電や火災といった重大な事故につながる可能性があるため、基本的には専門の資格を持つ電気工事士が行うべき作業ですしかし、一部の簡単な作業については、無資格で行うことが許されています。無資格でできる電気工事の範囲は、安全性が確保されている簡易的な作業に限定されており、電力供給の主要部分に触れない範囲内で行われるべきです。

無資格で行える具体的な作業には以下のようなものがあります。

1. 電球の交換

最も一般的な無資格でできる作業は、電球の交換です。家庭やオフィス、商業施設などで電球が切れた際に、電源をオフにした状態で電球を交換することは、資格を持たない一般の人でも行うことができます。ただし、電球の交換でも必ず電源を切るなど、安全対策を怠らないことが重要です。高所作業などの場合は、脚立や安全ベルトを使用するなどの配慮が求められます。

2. 家電製品の設置・接続

家電製品(冷蔵庫、テレビ、電子レンジなど)をコンセントに接続する作業も無資格で行うことができます。ただし、専用回路が必要な高出力の家電製品(エアコン、電気温水器など)を接続する場合は、専用の配線が必要になるため、電気工事士に依頼する必要があります。

3. コンセントやスイッチのプレート交換

コンセントやスイッチの外装カバーの交換も、無資格で行える作業の一つです。これらの作業は、電気配線に直接触れることがなく、外装部分の交換のみが対象となるため、安全に行うことができます。ただし、コンセント自体の交換や修理は資格を持つ電気工事士が行う必要があります。

4. 照明器具の設置(簡易なもの)

簡単な照明器具(シーリングライトやペンダントライトなど)の設置も、無資格で行えることがあります。特に、既存の配線をそのまま使用し、配線の取り外しや変更を行わない場合は、資格が不要です。しかし、複雑な配線作業が伴う場合は、資格が必要になるため、注意が必要です。

5. 電池式機器や低電圧機器の設置

低電圧のバッテリー式機器や、ソーラーライトなどの設置も、無資格で行うことが可能です。これらの機器は、通常の電力供給から独立して動作し、電気配線に触れることがないため、資格が不要です。

 

無資格で行える電気工事の範囲は限定的であり、安全性を確保した上での作業が基本です。感電や火災のリスクを回避するため、作業を行う前には必ず電源を切り、電気配線に触れないようにするなど、基本的な安全対策を徹底する必要があります。また、配線作業や電気設備の変更が伴う作業は無資格では行えないため、必ず資格を持つ電気工事士に依頼することが推奨されます。

 

 

有資格者でないとできない作業って何?

電気工事士の資格を持たない者が行えない作業には、主に以下のようなものがあります。これらの作業は、電力供給の根幹に関わるものであり、誤った作業が重大な事故につながるため、資格を持つ専門家でなければ行うことができません

1. 配線の新設や変更

新しい電気機器を設置する際の配線作業や、既存の配線を改修・変更する作業は、電気工事士の資格が必要です。配線作業は、正しい手順を踏まなければ電気が流れない、または不安定な電力供給が行われ、火災やショートの原因となるため、高度な技術と知識が求められます。

コンセントの新設

新たな場所にコンセントを設置するための配線作業。壁内に配線を通すため、正確な計測と施工が必要です。

分電盤の設置・交換

家庭や施設の電力供給を管理する分電盤の設置や交換も、有資格者でないと行えません。

2. 高圧電気設備の設置・保守

工場や大規模施設では、高圧電力を扱う設備が必要不可欠です。これらの設備は、数千ボルトの電圧を取り扱うため、感電や設備の破損による大規模な事故を引き起こすリスクがあります。そのため、これらの作業は、電気工事士の中でも第一種電気工事士などの高度な資格を持つ技術者が行う必要があります。

3. 太陽光発電設備の設置

太陽光発電システムの設置は、再生可能エネルギーの普及に伴い需要が高まっている分野です。この設備は、屋根や外部に設置されることが多く、高所での作業や配線作業が伴います。特に、電力供給を行うためのインバータの設置や、電力メーターとの接続作業は、有資格者でないと行えません。

4. EV(電気自動車)用充電設備の設置

電気自動車の普及に伴い、EV充電器の設置も増加しています。この設備の設置には、専用の回路とコンセントが必要であり、配電盤からの電力供給が求められるため、資格を持つ電気工事士が行う必要があります。無資格者が行うと、火災や感電のリスクが増加します。

 

電気工事士の資格を持たない者がこれらの作業を行うことは法律で禁じられており、安全性と信頼性を確保するために、必ず有資格者に依頼する必要があります。これにより、事故のリスクを最小限に抑え、安全な電力供給が確保されます。

 

そもそも資格って何?

資格とは、ある特定の分野での知識や技術を証明するものであり、その業務を行うために法的に認められた権利を持つことを示します。電気工事の分野においても、資格がないと行えない作業が多くあります。これは、電気工事が安全に行われなければ、感電や火災といった重大な事故に繋がるリスクが非常に高いためです。したがって、資格を持つことは、正しい技術と知識を持っている証拠であり、法律で定められた作業を安全に実行することができる能力があると認められた者に与えられるものです。

電気工事士の資格には、日本では主に「第一種電気工事士」と「第二種電気工事士」の2つの種類が存在します。どちらも国家資格であり、試験を通じて取得することが求められます。それぞれの資格には、対応できる作業範囲が異なるため、以下で詳しく説明します。

1. 第二種電気工事士

第二種電気工事士の資格は、主に家庭や小規模な施設の電気工事を行うために必要な資格です。この資格を持つことで、低圧の電気設備に関する工事が可能となります。具体的には、家庭内のコンセントや照明器具の取り付け・交換、配線の修理などが行えます。

試験内容は、筆記試験と実技試験の2つで構成されています。筆記試験では、電気理論や法規、電気設備の構造や使用方法などに関する知識が問われます。実技試験では、実際に配線を行い、正確に電気工事ができるかを評価されます。この資格は、家庭内での電気工事を安全に行うために必須のものであり、基本的な電気工事をカバーするための知識と技術を習得することが目的です。

2. 第一種電気工事士

第一種電気工事士は、第二種電気工事士よりも高いレベルの資格であり、大規模な施設や工場、ビルなどの高圧電気設備に関する工事を行うことができます。第一種電気工事士は、低圧設備に加え、高圧設備の工事や保守、点検などを行う権限を持ちます。高圧電気設備は、非常に危険な電圧を扱うため、これらの工事にはより高度な知識と経験が必要です。

この資格を取得するには、第二種電気工事士としての実務経験を積み、その後さらに筆記試験と実技試験を受ける必要があります。試験内容は、低圧電気設備の範囲を超えた、より高度な電気理論や設備の設計、保守管理に関する知識が問われ、実技試験では高圧設備の工事に関する技術が求められます。

第一種電気工事士の資格を取得することで、工場やビル、商業施設など、大規模な施設の電力供給を支えるための工事を行う権限を持つことができます。この資格は、電気設備の設計から施工、保守に至るまで、幅広い作業に対応するため、電気工事士としてのキャリアの中でも非常に重要な位置を占めます。

 

資格のない者が有資格作業を行ったら違法になるの?

電気工事士の資格を持たない者が、資格が必要とされる作業を行った場合、それは日本の法律で禁止されており、違法行為にあたります。無資格での電気工事は「電気工事士法」に基づいて厳しく規制されており、違反した場合には罰則が科される可能性があります。

違法に電気工事を行うことで発生するリスクは多岐にわたります。まず、資格がない者が電気工事を行うと、感電や火災のリスクが非常に高まります。電気は目に見えない力であり、正しい知識や技術がなければ、どこに危険が潜んでいるかがわからず、結果として重大な事故につながる可能性があるからです。

具体的に違法行為とみなされるのは、以下のようなケースです。

無資格で配線を新設する

例えば、新しいコンセントを設置するために壁内の配線を引く作業や、分電盤からの新しい回路を引く作業は、電気工事士の資格が必要です。これを無資格で行うと、電気工事士法に違反することになります。

分電盤の設置や交換

分電盤は、家や建物全体の電力供給を管理する重要な設備です。これを正しく設置しなければ、過負荷や短絡が発生し、火災や停電の原因となることがあります。したがって、分電盤の設置や交換は、有資格者しか行うことができません。

高圧電力設備の工事

高圧電力設備は、通常の電力設備に比べて遥かに危険性が高いため、無資格でこれらの工事を行うことは極めて危険です。法律で厳しく規制されており、無資格者がこれらの作業を行った場合は、罰金や懲役刑が科される可能性があります。

 

さらに、無資格で行った電気工事が原因で事故や火災が発生した場合、損害賠償責任を問われることがあります。保険も適用されない可能性が高く、経済的な損失を被るだけでなく、他人に危害を加えた場合には刑事責任を追及されることもあります。このようなリスクを避けるためにも、資格を持った技術者に作業を依頼することが重要です。

 

今後、資格ってどうなっていくの?

技術の進化とともに、電気工事士の資格制度も今後さらに発展していくと予想されます。特に、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術の発展、さらには再生可能エネルギーの導入が進む中で、電気工事のニーズは多様化していくでしょう。これに伴い、電気工事士に求められる知識や技術もより高度化し、新しい資格や認定制度が導入される可能性があります。

1. スマートホーム関連の技術

スマートホーム技術が進化することで、家庭内の電気設備がより複雑化しています。たとえば、IoTを活用した家電製品や、エネルギーの効率的な管理を行うシステムが普及する中で、電気工事士はこれらの設備の設置やメンテナンスに対応する必要があります。今後、スマート家電やエネルギー管理システム(EMS)に対応できる電気工事士のスキルが求められ、これに対応する新しい資格制度が整備される可能性が高いです。

2. 再生可能エネルギーの導入

太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が進む中で、これらの設備に関する電気工事も増加しています。今後は、これらの技術に精通し、エネルギー管理を行える電気工事士の役割が重要視されるでしょう。特に、蓄電池やエネルギー管理システムを扱うための新しい資格が導入される可能性があります。

3. 継続教育と資格の更新

技術が日々進化する中で、電気工事士が常に最新の知識と技術を身につけることが重要です。そのため、今後は資格取得後の継続教育や、定期的な資格の更新制度が強化される可能性があります。これにより、電気工事士は常に最新の技術や法規に対応できるようになり、安全で信頼性の高い作業を提供できるようになるでしょう。

4. 国際化と資格の統一

グローバル化が進む中で、国際的に通用する資格制度の導入も今後の課題となる可能性があります。電気工事士の資格は現在、国ごとに異なる基準で運用されていますが、国際基準に準拠した資格制度が導入されることで、国際的な電気工事の需要に対応できる技術者が育成されることが期待されます。

まとめ

電気工事は、家庭や商業施設、工場など、あらゆる場所で行われる重要な作業です。その範囲は非常に広く、無資格で行える簡単な作業から、資格が必要とされる高度な作業まで多岐にわたります。資格を持たない者が有資格作業を行うことは違法であり、罰則や事故のリスクが伴います。安全で信頼性の高い電気工事を行うためには、必ず有資格者に依頼することが重要です。

今後、技術の進化とともに、電気工事士の資格制度も進化していくでしょう。スマートホームや再生可能エネルギーの普及により、電気工事士に求められるスキルは多様化し、さらに高度な知識と技術が必要となる時代が訪れると考えられます。資格を取得することで、常に安全で効率的な作業を提供できる技術者として、社会に貢献できるでしょう。

 

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